Neural Basis of Stereoscopic Depth Perception

ヒトは、顔の正面に左右2つ の眼を有 してお り、視野内の広範囲にわたって両眼視が可能で ある。両眼視野内の対象物は左右の眼の網膜に 像 を投影するが、2つ の眼は異なる角度から世 界を見ていることか ら、左右の網膜に投影され る外界像はわずかに異なっている。このように、 左右の網膜における神経細胞活動による外界世 界の表現は少し異なっているが、2つ の異なっ た視野が重なって感 じられるのではな く、1つ の3次 元的な視野の知覚が生 じる。左右眼にお ける網膜像の水平方向の位置ずれを両眼視差と 呼び、両眼視差に基いて奥行きを知覚する能力 を両眼立体視と呼ぶ。両眼立体視は、脳が、左 右一対の網膜2次 元表現から外界世界に関する 1つ の3次 元構造を再構成する過程と捉えるこ とができる。 両眼視差の検出は一次視覚野(V1)で 算出さ れ、そのメカニズムは よく理解 され ている (Ohzawa, 1998)。 しかし、V1細 胞の視覚反応の 性質は、さまざまな点で、両眼奥行き知覚の心 理学的な性質と異なってお り、V1細 胞は両眼視 差という物理量の検出という重要な初期過程を 担 うものの、その出力がそのまま奥行 き知覚の 形成に貢献しているのではない。視覚経路のV1 以降の段階でさらなる情報処理を経た神経活動 が、両眼奥行 き知覚に使われるのである。 霊長類大脳皮質視覚野のうち背側視覚経路 (V1野 から頭頂葉へいたる経路)に 属するMT野 の細胞がある種の奥行 き知覚課題に機能的に関 わっている良い証拠がある。MT野 細胞は、 ど のような両眼視差に反応するかという性質にも とづいてMT野 内で配列されてお り、その活動 の試行間変動とサルの両眼奥行き判断には相関 がある。 しかも、MT野 の局所刺激により、サ ルの奥行き判断に影響を与えることができる。 たとえば、交差視差(も のが注視面より手前に あるときに生 じる視差)に 反応する細胞が集ま っているところを電気刺激し、細胞の活動を賦