STUDIES ON SOIL-BORNE CEREAL MOSAICS

ムギ萎縮病ウイルスの土壤伝播のメカニズムを明らかにするために, WYMVおよびBYMVの2種のウイルスの汚染土壤を用いて実験を行なつた. 本報において, 現在までに得られた結果を報告すると共に, これに基いてこれらウイルスの土壤伝播機作に関する1つの見解を述べた.罹病植物体全部を磨砕し埋没した土壤は, 初年度および次年度には全く病原性を示さなかつたが, 3年目に至りいずれの罹病植物埋没土壌においてもわずかながら感染個体を認めた.水に浸漬した病土を, Stokesの公式に基き, あるいはASK淘汰器により, 数種の大きさの土壤粒子のfractionに分けてそれらの病原性を調べた結果, 最初の2年間は‘10-50μ’附近の大きさの粒子から成る土壌のみに病原性を認めたが, 3年目には‘ 2μ’粒子の数部分を取り, 水で稀釈してたびたび検鏡したが, 前者において特記すべき頻度であらわれる細菌または糸状菌を認めなかつた. さらにまた, これらの粘士部分の粒子中には, 線虫類を全く認めなかつた.本報に述べた実験結果と, 筆者のこれまでの実験から得た知識とを併せ考え, 従来のムギ萎縮病ウイルスおよびその他の土壤伝播生ウイルスに関する研究結果を種々検討し, さらに土壌学的見地からの考察をも試みた結果, 筆者は次のような見解に達した. すなわち, 少なくともムギ萎縮病ウイルスの土壌伝播のメカニズムを説明するためには, 何ら特定の微生物的媒介者を必要とせず, 蛋白質を吸着し且つ保護すると考えられる粘土部分 (‘<2μ’particle fraction, 無機および有機コロイドを含む) の粒子が, ウイルスを吸着してcarrzerの役割を果しているものと考える.