Influence of Wood Anatomy on the Fixation of Copper-based Preservatives

銅系水溶性防腐剤の固着性を木材組織ごとに明らかにするための基礎的知見を得ることを目的に,スギ心材から得られた薄切片にCuAz水溶液を滴下し,銅元素の濃度分布をSEM-EDXA法で調べた。薄切片の使用は,木材中の銅元素の分布について,より詳細な分析を可能にした。仮道管細胞壁では早・晩材ともに二次壁に比べて複合細胞間層で銅元素が多く検出された。辺材では有縁壁孔対の壁孔膜のトールスに銅元素が早・晩材ともに集中するのに対して,心材のトールスにおける銅元素の相対濃度は辺材と比べて低かった。また半縁壁孔対の壁孔膜,軸方向柔細胞の内容物に多量の銅元素が存在した。一方,アルコール・ベンゼン抽出処理した心材における銅元素の相対濃度は,全ての部位で無処理の心材と比べて低かった。木材組織によって銅元素の濃度分布が異なった理由として,各部位を構成する木材化学成分とアミンー銅錯体との固着性の違いが考えられた。