evelopment of a Bioabsorbable Stent to Treat Benign Bile Duct Stenosis

はじめに:近年,腹腔鏡下胆囊摘出術,生体肝移植 術が普及し,治療に難渋する良性胆管狭窄に遭遇する 機会が少なくない.しかし,これら疾患の現行の非手 術的治療法であるバルーン拡張やチューブステント 治療は再狭窄が多く,十分な治療法とはいえない. 我々は良性胆管狭窄の治療を目的とし,生体吸収性ス テントを開発しているので,その初期成績を報告す る. 方法:雑種ブタ(15~30kg)を全身麻酔下,正中切 開にて開腹し,肝外胆管を同定した.その肝外胆管を 絹糸にて強固に結紮し,その結紮を解放後,結紮部分 を含むように胆管を長軸方向に切開し,直径 5mm,長 径 5cmのらせん状の生体吸収性ポリマー製ステント を切開部から挿入し,胆管切開部を縫合閉鎖した.こ のステントはポリ乳酸で作製し,自己拡張能を有して いる.生体内で 3か月くらいから脆弱となり,約 2 年で完全に分解吸収されるように設計した.肝外胆管 結紮解放 1週後の肝外胆管をコントロールとした (n=3).肝外胆管結紮解放後,ステント挿入した肝外 胆管を 3,6か月後(各 n=3)に採取し,ステントの機 能を評価した. 結果:ブタは全例,組織を採取するために犠牲死さ せるまで生存した.胆管結紮解放 1週後の胆管の結紮 部は肉眼的に狭窄が認められ,組織学的に胆管上皮が 脱落し,線維性の肥厚が認められた.結紮解放後ステ ント挿入した群においては,3か月後,胆道系酵素の増 加は認められたが,胆管に狭窄はなく,内腔に胆汁が 付着したステントが残存していた(Fig. 1a).胆管上皮 は連続していた.6か月後は,ステント移植したすべて のブタにおいて,ステントは胆管内より逸脱し,組織 学的に胆管上皮は連続していた(Fig. 1b). 考察:胆管狭窄治療のためのステントに関しては, メタリックステントは抜去困難であり,胆管上皮の過 形成性増殖を招くことにより基本的には良性胆管狭 窄には不適切とされている.一方,チューブステント は,その径が細いことにより閉塞しやすく,頻回な交 換が必要である.これらの理由から,良性胆管狭窄に 対するステントとしては十分なものはなく,ある一定 期間胆管を拡張させておく機能を有し,その刺激によ り胆管上皮の過形成を導かないような材質が求めら れている.我々は過去に生体吸収性ポリマー製の人 工胆管を作製し,肝外胆管上皮再生を検討した.この 結果,胆汁の通過側に胆管上皮が十分に形成されてい る胆管には狭窄がないことを確認した.本研究におい ては,胆管を結紮解放 1週後には胆管狭窄が認められ たが,ステント挿入群においては,挿入後 3か月,6 か月の胆管に狭窄はなく, 胆管上皮が連続していた. 今回は狭窄予防としてのステント機能を検討した実 験だが,狭窄していく胆管を狭窄させることなく,そ の径を保てたことより,このような生体吸収性の胆道 ステントを良性胆管狭窄の予防,治療に使用可能と考 えている.しかし,ステント挿入 3か月後に,胆管に 狭窄はないものの,胆道系酵素の上昇が認められたこ とより,さらに早期にステントが胆管から逸脱可能で あるように,材質改良,留置方法の工夫を行っている. Key word:bioabsorbale stent 文献:1)Siriwardana HP, Siriwardena AK:Systematic appraisal of the role of metallic endobiliary stents in the treatment of benign bile duct stricture. Ann Surg 242:10―19, 2005 2)Dumonceau JM, Deviere J, Delhaye M et al:Plastic and metal stents for postoperative benign bile duct strictures : the best and the worst. Gastrointest Endosc 47:8―17, 1998 3)Miyazawa M, Torii T, Toshimitsu Y et al:A tissueengineered artificial bile duct grown to resemble the native bile duct. Am J Transplant 5:1541―1547, 2005 研究速報 日消外会誌 40(8):1548,2007年