はじめに Sm-Fe-N 合金粉末は高温で分解するため Nd-Fe-B 磁石とは異なり、焼結により固化成形できないことが欠 点となっていた。そのため、現在 Sm-Fe-N 磁石はボンド磁石として使用されている。最近、新しい固化成形 法として Nd-Fe-B アモルファス合金粉末などをアモルファスのまま固化成形できる冷間圧縮せん断法が開発 された。この冷間圧縮せん断法は冷間で粉末を圧縮せん断することを特徴とする。そのため、高温で分解 する Sm-Fe-N 合金粉末も冷間圧縮せん断法により固化成形できることがわかってきた。しかし、冷間圧縮 せん断法では板状の試料しか作製できない。そこで、放電プラズマ焼結法により Sm-Fe-N 合金粉末が固化成 形できるかどうかについて検討したところ、高温で分解する Sm-Fe-N 合金粉末も放電プラズマ焼結法により 固化成形できることがわかってきた。本研究では放電プラズマ焼結法により作製した Sm-Fe-N 磁石の磁気特 性について調べたので報告する。 実験方法 原料粉末して TbCu7型および Th2Zn17型の 2 種類の Sm-Fe-N 合金粉末を用いた。まず、これらの Sm-Fe-N 合 金粉末の固化成形を冷間圧縮せん断法で試みた。なお、雰囲気は大気中、温度は室温で行った。次に Sm-Fe-N 合金粉末の固化成形を放電プラズマ焼結法で試みた。なお、焼結条件としては、雰囲気は真空中、焼結温度 は 673-873K、焼結圧力は 100MPa とした。得られた試料の密度はアルキメデス法で測定した。得られた試 料の構造と組織は、X線回折装置、走査型電子顕微鏡および EPMAで調べた。また得られた試料の熱磁気特性 は振動試料型磁力計で、ヒステリシス曲線は振動試料型磁力計で測定した。 結果および考察 冷間圧縮せん断法では TbCu7 型および Th2Zn17 型の Sm-Fe-N 合金粉末ともほとんど分解することなくバルク の磁石に固化成形できることが、また得られた Sm-Fe-N 磁石は原料粉末と同様に高い磁気特性を示すことがわか った。しかし、放電プラズマ焼結法では Th2Zn17 型の Sm-Fe-N合金粉末は低温でも一部分解してしまうことが、 また高温(873K)では完全に分解してしまうことがわか った。それに対して、TbCu7型の Sm-Fe-N合金粉末も高温 では完全に分解してしまうが、低温では分解することな く固化成形できることがわかった。 図 1 に TbCu7型の Sm-Fe-N 合金粉末と放電プラズマ焼 結法により作製した TbCu7型の Sm-Fe-N 磁石のヒステリ シス曲線を示す。放電プラズマ焼結法により作製した Fig.1 Hysteresis loops of (a) Sm-Fe-N powder TbCu7型の Sm-Fe-N磁石は原料粉末とほぼ同等の高い磁気 and (b) Sm-Fe-N magnet produced by spark 特性を示すことがわかった。 plasma sintering method.