1.はじめに 薄板軽量形鋼造建築物 (以下,スチールハウスと称す )とは,枠組 壁工法 (ツーバイフォー )の枠組み材を木材から,厚さ 1.2mm前後 の表面処理された薄板軽量形鋼に置き換えたものである 。 スチールハウスはアメリカで生まれ,兵庫県南部地震後に日本に 上陸したものであり,木造よりも大スパン空間が可能で設計の自由 度が増したり,亜鉛メッキ加工により高耐久であったりと,有用な 建築構造であるといえる。また,リサイクル率の高い鉄鋼を用いて いるため,環境面から見ても優れた建築構法であるといえる。これ らのメリットもあり,平成 7年には(財)日本建築センターより「ス チールハウス建築物の性能評価・評価基準」,平成 13年には国土 交通省告示第 1641号「薄板軽量形鋼造の建築物又は建築物の構造部 分の構造方法に関する安全上必要な技術的基準を定める等の件」(以 下,告示と称す )が定められ,日本でもスチールハウスは普及してき ている。告示の解説書として,平成 14年には「薄板軽量形鋼造建築 物設計の手引き」(以下,「手引き」と称す )が刊行されており,そ れをもとに実設計が行われている。告示では,スチールハウスは地 階を除く階数を 3以下と定めていたが,2012年 5月には一部改正案 が公示,パブリックコメントの募集がなされ,その後,告示の改正 が行われ同年 9月 24日に施行された。改正された告示では,階数制 限が4階以内までに拡張されること,また鉄骨造や鉄筋コンクリー ト造と併用する (以下,混構造と称す )場合は階数制限が緩和される こと等があり,スチールハウスが一層積極的に利用される事が想定 される。 スチールハウスの耐水平力要素は,薄板軽量形鋼の枠材に面材を ドリルねじ接合した耐力壁 (以下,スチールハウス耐力壁と称す )で あり,通常は耐力壁に取り付く腰壁や垂壁の効果は無視して,片持 ち柱として設計が行われている 。したがって,建物階数が増える