Solubility of Orpiment (As2S3) in Tamagawa Hot Springs, Akita Prefecture

硫化水素を含有する酸性温泉に沈殿する硫化ヒ素の生成機構を明らかにするため,秋田県玉川温泉の温泉水を分析し,沈殿する三硫化二ヒ素との関係を検討した。さらに,大気圧のもとで,15~80°Cの温度範囲で,硫化水素を含有する酸性の0.05mol/l塩化ナトリウム溶液中で雄黄の溶解度を測定した。溶液中のヒ素はモリブデンブルー法で定量した。温泉はヒ素含量が比較的多く,硫化水素の少ない源泉(ヒ素2.6~3.4mg/l,硫化水素1.2~1.9mg/l)とヒ素含量が少なく,硫化水素の多い源泉(ヒ素0.002~0.10mg/l,硫化水素92~240mg/l)とにわけられる。三硫化二ヒ素の沈殿は,この2種類の温泉水が混合することにより生成されることが判明した。また,雄黄の溶解度は,pHおよび温度の増加とともに大きくなるが,硫化水素含量が比較的少なく,pHの低いところでは,As2S3+4H2Oげた2HAsO2+3H2Sの可逆反応式にしたがって溶液中の硫化水素濃度と化学平衡がたもたれていると考えられる。一方,硫化水素含量が多くなると雄黄の一部はコロイド状可溶性硫化水素錯体As2S3・nH2S(nは任意の数)として溶解し,pHが高くなるにしたがってメルカブト錯体As2S3・nH2S・HS-として溶解してゆくことが判明した。