BIOENERGETICS IN CLINICAL MEDICINE

米国においては青年層の60%が, 又中年層の80%もの多数の人々が歯周疾患に罹患している。多分日本においても同じことがいえるであろう。現在歯周疾患の治療効果をより一層たかめることが要求されているが, しかし口腔内療法はあまり効果があがっていないと思われる。近年, 歯周組織の健康保持に全身の栄養状態が考慮されるようになってきた。又, 歯牙, 歯根膜, 歯槽骨等におよぼすビタミン類の生化学的研究も行われてきた。コエンザイムQ10 (以下CoQ10と略) は歯肉のミトコンドリアにも存在し, 歯肉におけるエネルギー獲得には必要欠くべからざるものである。歯周疾患歯肉ではCoQ10が欠乏していることが (p<0.001) たびたび報告されている。現在, 臨床で使用されているCoQはCoQ10, CoQ7,ヘキサハイドロCoQ4の三種類であり,それらを用いた歯周病患者への投与が歯科医, 歯周病専門医によって行われている。その結果, このビタミン様物質に治療効果があることが証明された。又, 二重盲検法によるこれら三種のCoQの薬効がすでに6例報告されている。CoQはヒト組織においてはCoQ10の型で存在している。そこで歯周病患者を8人のCoQ10投与群と10人の placebe 投与群に分けて二重盲検法による実験が行われた。CoQ10投与群の8人中8人に, 又 placebo 投与群では10人中3人に歯周疾患症状の改善が認められ, 統計的にCoQ10の治療効果が確認された (p<0.01)。一方, 29人の歯周病患者について行われた実験では歯肉におけるCoQ10 deficiency が100%, 又白血球における deficiency が86%の頻度で出現した。血液のCoQ10 deficiency は栄養のアンバランスを意味する。特に口腔清掃状態が悪い場合には歯肉におけるCoQ10の欠乏が歯肉炎, 歯周炎の増悪に関与すると考えられる。又, その逆に歯周炎が歯肉のCoQ10 deficiency を惹起しているとも考えられる。CoQは生体のエネルギー獲得を促進するから, CoQ投与により効果的な治療が期待できる。又, 歯周疾患の基本的な治療と併行してCoQを投与すれば治癒を促進するであろうし, 予防にも使用しうると思われる。