Cardiovascular complications in chronic hemodialysis patients with special reference to coronary sclerosis and pericardial effusion

長期透析患者の予後は心血管系合併症に左右されることが多い. 本稿では, このうち冠硬化症と心膜炎について報告する.1. 冠硬化症: 高圧心×線透視によって慢性透析患者65例中14例に冠動脈石灰化を認め, そのうちびまん型11例 (うちしAD, CX, RCAの3枝病変8例), 限局型3例であった. 狭心症状のある患者は, 3枝びまん型石灰化例中の1例であった. 基礎疾患としては, 糖尿病性腎症7例中4例に冠動脈石灰化を認め, 他の疾患より高率であった. 石灰化陽性患者は全例50歳以上であり, 透析期間は1例を除き3年以上であった.年齢50歳以上かつ透析期間3年以上の患者では, 石灰化は20例中13例という高頻度であった. このうち2枝以上にわたるびまん性石灰化は8例であったが, 50歳以上の未透析腎不全例では19例中2例と少なく, 糖尿病性腎症患者を除いても両群間に差を認めた. すなわち, 透析療法は冠硬化症のrisk factorの1つであり, 長期透析に際してとくに高齢者や糖尿病性腎症の管理の上で注意を要する点である.2. 心膜炎: 心タンポナーデ症状が出現した場合, または心エコー図で心膜液が500ml以上で増加傾向にある場合, 局麻下で剣状突起下から心膜切開を行い, ドレーンを数日留置した (12例). 2例は温水によって貯留した心膜液の残遺で, CRP (-) であり, LDHの心膜液/血清比は0.5, 0.6と低値で漏出液と推察された. 他の10例は透析導入後15日~6年で発病し, 初発症状は発熱 (37~38℃), 胸痛ないし胸内苦悶, 咳漱, 動悸などであり, これらはしばしば心拡大に先行した. CRPは全例強陽性であり, LDH比は2.5~13.4 (平均6.0) と著しく高値で, 尿毒症性心膜炎と判断された. 術後に再発や心膜癒着はなかった. 一部の症例で心膜腔内にトリアムシノロンを注入したが, 有効性は確認できなかった. 尿毒症性心膜炎による大量の心膜液は早期に排除すべきであり, 本法は心膜穿刺より安全で確実な方法と考える.