RESEARCH FIELDS AND FUTURE PROGRESS ON LIFELINE EARTHQUAKE ENGINEERING

地震工学の一分野としてのライフライン地震工学 は学術研究は勿論のこと, 関連実務の分野においても 多大の貢献を果たしてきている. ライフラインは膨 大なネットワークを構成しており, 近代都市活動に重 要なサービス機能を果たしていると言う点で他の工 学分野と異なる点が多々見受けられる. 世界的にみて もライフライン地震工学については最近の約20数年 間に長足の進歩が見られた1)~6). それは都市への人口 集中と都市機能の高度化にともなって, ライフライン への依存性が極めておおきくなったためである. 一 方, 地下空間の利用にともなって道路 ・鉄道施設も含 め, 供給ライフライン施設が地下に建設されることも 多 くなっており, 直接に地震動や地盤の動きに影響を 受けやすい. また, 多くのライフラインはそのシステ ムのなかに供給源 ・送配ライン・貯蔵施設を内包 し ており, わずか一箇所の被災でもシステム全体に多大 の影響をあたえることは明白であり, 最近の地震災害 でも知 られるように2次 災害の波及を防止する上で もライフラインは重要である7)~11). なお, 道路 ・鉄道 も重要な交通ライフラインであり, ライフライン研究 の対象に含まれるが, 本稿では, おもに供給 ・処理お よび通信ライフライン系に限定して述べることとす る. これまでのライフライン地震災害の経験から判断 して, 災害要因として, 強震動 ・地盤の永久変形 ・液 状化とそれに伴う側方流動, などが支配的であること が知られている. 従来ライフライン地震工学に関して 数多くの研究がなされ, その学問としての体系化 も進 んでいる. 現状のライフライン研究は, 地震災害とそ の分析, ライフライン要素施設の地震時挙動の理論 的 ・実験的解明, 耐震設計手法の新たな展開, ネット ワークの信頼性とシステム地震防災, そして災害波及 分析, に体系化して論ずることができよう(図 一1. 1 参照). とくに, 下記の特定課題については今後の研 究展開が期待される. ・ライフライン要素施設 と被災 要因の関連, ・ライフラインのシステムとしての危険 度評価, ・ライフラインに関わる観測 と実験による複 雑な現象の解明, ・低頻度直下型地震に対する地中構 造物の耐震設計法の確立, ・緊急対応 ・復旧戦略を含 むライフラインの地震防災対策, ・ライフライン機能 停止に伴う社会的 ・経済的影響の評価, などである. 本稿ではライフライン研究の現状を述べるとともに 上記の課題について概述する. 図-1. 1ラ イフライ ン地震工学研究 の体系