筆者らは,BEANSプロジェクトにおいて,高機能膜を被 覆した繊維状基材を製織することにより,メートル級の大 面積フレキシブルシートデバイスを低コスト,低環境負荷 で製造するためのプロセス開発を行っている 。繊維状基 材を製織することにより作製するシートデバイスでは,基 材間を電気的に接続するための接点構造が重要となる。そ れは,シートに曲げ変形が加えられる際に,縦横の基材間 に空隙が生じるため,基材間を電気的に接続するために は,空隙が生じた際にも,電気的接続を保つ接点構造が必 要となるためである。従ってフレキシブルシートデバイス の製造プロセスや実用条件を考慮すると,接点は可動であ り,かつその信頼性を確保することがシートデバイス実現 のための必須技術と言える。このような接点材料として期 待される特性としては,(1)大きな変形に対して追従するこ とができるような弾性的特性を有すること,(2)変形しても 電気的特性が変化しないこと,(3)摩擦や磨耗に対する耐久 性が高いこと,が挙げられる。 そこで,これまでの接点材料について振り返ってみる。 MEMSにおける可動接点では,RF-MEMSスイッチの接点 が挙げられる 。RF-MEMSスイッチの構造としては,カ ンチレバー型構造やエアーブリッジ型構造があるが,どち らの場合にも,信号線路を形成した基板上に,金属接点を 設けた構造を形成し,アクチュエータで駆動し接点をオン -オフする構造となっている。接点の材料としては,導電 性の良い貴金属系(金や白金等)の材料が使われている。 また,接点の耐久性を向上させるために,カーボンナノ チューブが分散した金めっき材料を使用する試みもなされ ている 。また,一般のコネクタ材料に注目してみると, 錫 (Sn)めっきが,金めっきと共に,コネクタ等の機構デバ イスの接触部に広く用いられている。Snめっきの場合は, 表面が緻密な酸化被膜で覆われていることにより,Snの腐 食を防いでいる。しかしながら,酸化被膜が接触部に介在 すると接触抵抗を増大させる一因となることが指摘されて いる 。以上のように,これまでの接点材料は,金属がほ とんどであり,シートデバイスを実現するために必要な接 点材料の特性のうち,特に (1)の弾性的な特性を実現する のは困難である。 そこで筆者らは,フレキシブルデバイス用接点材料とし て,近年,フレキシブルディスプレイの実現が可能な有機 エレクトロルミネッセンス(有機 EL)や有機トランジス タ,金属性透明導電体の代替として注目されている導電性 ポリマーに注目した。導電性ポリマーは,インクとしてイ ンクジェット技術などを利用し直接基材にパターンを作る プリンタブル回路などの次世代への研究・実用化も盛んに 行われていることから ,繊維状基材上への成膜にも向い ていると考えた。 本稿では,筆者らがこれまで取り組んできた導電性ポリ マーを利用したフレキシブルデバイス用接点構造について 解説する 。はじめに導電性ポリマー自体を成型加工す ることにより作製したマイクロカンチレバーアレイ構造を 用いた接点構造について述べる 。そこでは,カンチレ バーアレイ構造の利点と欠点について概説する。その後, カンチレバー構造の問題点を解決し得る構造として,導電 性ポリマーを被覆したシリコーンエラストマーを用いた接 点構造について述べる 。導電性ポリマーとしては, いずれの接点構造においても,PEDOT:PSS [Poly (3, 4ethylenedioxythiophene) – Poly (styrenesulfonate)]を用いた。 * BEANS研究所MacroBEANSセンター(〒 305-8564 茨城県つくば市並木 1-2-1) **(独)産業技術総合研究所先進製造プロセス研究部門(〒 305-8564 茨城県つくば市並木 1-2-1) ***(独)産業技術総合研究所ナノエレクトロニクス研究部門(〒 305-8568 茨城県つくば市梅園 1-1-1 つくば中央第 2) ****(独)産業技術総合研究所集積マイクロシステム研究センター(〒 305-8564 茨城県つくば市並木 1-2-1) *Macro BEANS Center, BEANS Laboratory (1-2-1 Namiki, Tsukuba, Ibaraki 305-8564) **Advanced Manufacturing Research Institute, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (1-2-1 Namiki, Tsukuba, Ibaraki 305-8564) ***Nanoelectronics Research Institute, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (Tsukuba Central 2, 1-1-1 Umezono, Tsukuba, Ibaraki 305-8568) **** Research Center for Ubiquitous MEMS and Micro Engineering, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (1-2-1 Namiki, Tsukuba, Ibaraki 305-8564) BEANSプロジェクトにおける製織シートデバイス用 接点構造に関する研究 三宅 晃司 ***,山下 崇博 *,Sommawan Khumpuang***,高松 誠一 *****,伊藤 寿浩 *,****
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