Response of the Coastal Branch Flow to Alongshore Variation in Shelf Topography off Toyama Bay.

対馬暖流の沿岸分枝流の形成には陸棚地形が重要であると言われているが,この分枝流の流路にある陸棚域は富山湾沖で一端途切れている。はじめに,17年間(1978~1994年)の水温資料を用いて,対馬暖流全域における水平熱輸送量の季節変化を調べた。その結果,春季において正の熱輸送量の極大値(すなわち,局所的に大きな水温上昇域)が富山湾沖に出現し,夏季~秋季にかけて日本列島沿岸に沿って北上していることが。そこで,富山湾沖に出現したこの局所的な水温上昇域の形成・移動の物理メカニズムを簡単な2層モデルを用いて調べた。モデル計算は静止状態から始め,陸棚上の順圧的な沿岸分枝流を上流側で強制し続けた。この沿岸分枝流が富山湾沖を模した陸棚の途切れる海域に流入したとき,順圧的な流れ場は内部境界面を沿岸側へ下方に傾けた傾圧的な流れ場へと遷移した。数十日後には,この傾圧流は時計回りの渦を形成し,内部境界面の顕著な水平勾配から判断される沖合いフロント構造を保ったまま,陸棚斜面に沿ってゆっくりと北上する様子を再現した。このモデルで再現された時計回りの渦の形状と大きさは,上述の水温上昇域と同程度のスケールをもっている。富山湾沖の陸棚斜面上における渦度バランスは,富山湾に近い岸側の上層において負の相対渦度(すなわち,時計回りの渦)を供給する非線形項の卓越を示している。さらに,この時計回りの渦の北上には佐渡島付近の陸棚斜面上を北上する下層流の存在が必要であることが示唆された。