The orientation of apatite crystals in Lingula unguis shell

シャミセンガイ (Lingula unguis) の殻体におけるアパタイト結晶の配向性をX線回折法によって調べた。また, 殻体の破切形態とアパタイトの配向性の関係を走査型電子顕微鏡によって観察し, さらに, 石灰化の時期・程度の異なる部位において有機質のアミノ酸分析をおこなった。アパタイトのc軸は殻体面に対してほぼ平行で, 成長線に直交するように配向していた。殻体面内でのc軸の配向度は中央部では低く, 横周辺部では高く, 先端部や殻頂側ではやや低い傾向がみられた. また, 殻体の内側表面ではアパタイトのc軸はよく配向していたが, 外側表面での配向性は低かった. 殻体のアパタイト層の破切形態からもアパタイトの配向成長がうかがわれた。有機質のアミノ酸組成は, alanineが約1/3を占め, glycineが約1/7, aspartic acld, arginine, glutamic acidがそれらに次いで多かった。proline, hydroxyproline, hydroxylysineが少量含まれており, コラーゲン様のタンパク質の存在が考えられた. 殻頂側外層においては, 主成分であるglycineとalanine (gly/ala) の比, 及び, hydroxyprolineとhydroxylysineの含有量が他の部位の2倍近く, 殻体の部位によるタンパク質の組成の違いが示唆された。