Property, Electronic and Crystal Structures, Thermodynamic Stability, and Cathode Performance of Lix(Mn, Co, Ni, M)O2 (M=Al, Ti, Fe) as a Cathode Active Material for Li Secondary Battery

1 緒 言 LiCoO2は合成法が容易であり,良好な電極特性を示すこ とから,Li二次電池正極材料として最も幅広く用いられてい る1,2).しかし,希少金属のCoを用いるためコスト面,環境 面での問題を抱えているため,その代替材料の研究が進めら れている.近年,LiCoO2の代替材料として,LiNixCo1-2xMnxO2 が多く研究されている.LiMn1/3Co1/3Ni1/3O2を初めとした これらの材料は,150 mAh/g(2.5~4.2 V vs. Li/Li+),200 mAh/g(2.5~4.6 V vs. Li/Li+)の可逆容量を示し,良好な サイクル特性を持ち,熱安定性にも優れることからLiCoO2 の代替材料の候補として注目されている7).しかし,Li+と Ni2+のイオン半径が近いためカチオンミキシングが生じてい ることが報告されている8).カチオンミキシングは放電容量 の劣化などを引き起こすことが知られているが,その充放電 時の挙動,定量に関してはほとんど報告されていない. 著者らはこれまでに,熱量測定により,Li二次電池正極活 物質における熱力学的安定性について報告してきた.Liリッ チな Li4Mn5O12,欠陥スピネル構造を持つ Li2Mn4O9及び LiMn2O4のMnサイトの一部を置換,またはLi組成を変化さ せた試料LixMn2-yMyO4(M=Li, Mg, Zn, Ni, Co),LixMn1yMyO2(M=Mn, Al, Cu),LixMn1/3Co1/3Ni1/3O2についてサイ クル特性と熱力学安定性について検討してきた9-16).これら の中で,熱力学的安定性,構造安定性,サイクル特性の間に 相関関係があることを報告してきた. 本報では,まず固相法,溶液法によりLix(Mn, Co, Ni, M) O2(M=Al, Ti, Fe)を合成し,試料のキャラクタリゼーシ ョン,電池特性について検討した.さらに,これらの試料と 化学的にLi組成を制御したLixMn1/3Co1/3-0.1Ni1/3Al0.1O2につい て,カロリーメトリーにより溶解熱を測定し,単純酸化物か ら目的の酸化物を得る反応の1 g原子あたりの反応のエンタ ルピー変化∆HR及び標準生成エンタルピー∆ fHを求め,そ の熱力学安定性について検討した.また,粉末中性子・X線 回折による結晶構造解析,マキシマムエントロピー法 (MEM)により原子核・電子密度分布の検討を行い,その構 造安定性についても合わせて検討した.これらの結果から, 本系における物性,熱力学的安定性,構造安定性とサイクル 特性の関係について検討した. ― Article―