Application of Ab initio MO method to vibrational spectroscopy.

構造化学に とって振動分光学は依然 として重要 な手法 で ある.そ して振動分光学の重要な 目的は,分 子内(あ るいは分子間)ポ テンシャル関数(力 の定数)の 決定 に ある.力 の定数はGF行 列法の確立や力場に対す る近似 的 な表現一例 、えばUrey-Bradley力 場な ど一 の開発 とと もに,多 くの分子 の振動 スペ ク トルの測定に基 づいて積 み上 げられ てきた. 一方で ,振 動 スペ ク トルは生命機 能に関係す る分子 の 状態を解析す ることに使われた り,実 験的に決 められた ポテ ンシャル 関数を 計算機 プログラムの中に 組み 込 ん で,分 子設計に応用 された りしている.こ の ような状況 に もかかわ らず,力 の定数 のセ ッ トは いまだに不充分 で あ り,よ り大 きい分子に適 用した り,重 原子 を含む分子 の構造や振動数を計 算す るには未知 の部分が多い. 比較的小 さな分子の力の定数 に関 して も,実 は まだ多 くの問題点を含んでいる.分 子 内力場を振動座標 の一般 二 次形式 に表現 した時の非対角項は,ご く少数 の分子を 除いては,実 験 的に決定 困難か,多 くの場合,不 可能で ある.こ れ ら非対角項は振動 エネルギーに対す る寄与は 小さいが,正 確 な振動型 を計算 した り,大 きな分子に転 用して より複雑 な振動 エネルギー構造 を計算す るために は大事 な量 とな りうる. 環状分子 の内部座標 の適当 なと り方や,そ れに伴 な う 力の定数 などに関 しては,殆 ん ど手つかずの感があ る. 高振動励起状態が同位体分離 ・反応な どの分野で重要 に な りつつ あるが,三 ・四原子 よ り大 きな分子で非調和定 数がわか ってい る例は極 く少 ない.実 験的な努力は進展 してい る ものの困難は大 きい.そ れは実験値の数に対 し て決め るべ きパ ラ メータが多す ぎるためであ る. 一方 ,量 子化学的 な手法,特 に分子軌道法の最近のめ ざましい発展は,先 に述べた実験的 な困難を解決す る手 法 としてか な りの信頼を得つつあ る.構 造パ ラメータに 関 してはDZ+P基 底(基 底関数については,3-2で 説 明す る)を 使 うと,長 さで ±0・02A,角 度 で ±3。程度 の誤差で実験値を再現す ることがで き,ま た基底 関数 に み られ る系統的な差異を補正す る ことで直接的 な計 算誤 差を更に1/5程 度にす ることがで きると言われ ている. 分子内振動 とは電子が決め るポテ ンシャル場 の中での 核の運動であ る.振 動のポテ ンシャルを決 める ことは, ボル ン ・オ ッペ ンハイマー近似 内で電子波動 関数 を決め ることに他な らない.つ ま り,分 子軌道法 の直接的 な応 用問題 である.こ の小論 では,非 経験的分子軌道法(ab initio MO法)を 用 いて振動分光学上 の諸量一力 の定数,