Autologous Fat Injection Laryngoplasty

は じ め に 声帯内注入術は一側性声帯麻痺や声帯萎縮,声帯溝症な どによる声門閉鎖不全に対する外科的治療法であり,これ までに様々な注入材料が報告されてきたが,その多くが効 果の持続性や安全性の点で何らかの問題を有していた. 1991 年にMikaelianら が注入材料として報告した自家脂 肪は,自家組織であるが故に安全性と経済性に優れ,また 粘弾性が声帯粘膜に近いとされることから 不適切な部位 への注入による問題が生じにくいという特徴を持ってい る.脂肪組織の吸収による治療効果の経時的な減弱が欠点 として挙げられているが 3, ,注入量などの工夫によって 長期的な効果が期待できるとされており 5, 6) ,近年では増 殖因子との併用も研究され始めていることから 7, ,今後 も広く利用されていくと考えられる. 本稿では当科において行われている声帯内脂肪注入術の 手技について解説する.