Possibilities of Engineering Ethics Education
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本論文は,筆者が所属する大学の工学部電気・電子 工学科4年生を対象に2004年度前期から新規に開講 した「技術者倫理」の授業について紹介し,授業を行 って感じたことや学生の感想から「技術者倫理教育の 可能性」について考察したものである. 石原孝二「工学倫理の教科書」1)では,2003年初頭 頃までに発売された工学倫理や技術者倫理に関する教 科書が紹介されているが,実に多様な切り口があるこ とがわかり,この分野の豊かな可能性が窺える.大別 すると,1事例中心に倫理的判断力の養成を目指すも の2企業内技術者の生き方を考えるもの3科学技術と 社会という広い観点から技術者の生き方を捉えようと するもの,などに分けられると考えられる.筆者の授 業では,3の社会的文脈を重視する立場を取っている. 本授業ではことさら倫理とは何かとかを哲学的に考 えたり,倫理的判断の訓練はしない.それは筆者が哲 学や倫理の専門家ではないという理由だけではない. 倫理には唯一の答えはなく,社会や時代状況に応じて 判断基準も変化する.そして倫理は日常の習慣である から,元々数ヶ月程度の授業で身に付かせうるという ようなものではない.それよりも,科学技術にまつわ る現実そのものを明らかにみれば,科学技術者の視野 狭窄や技術者の倫理が問題状況にあることは明らかで ある.その中で技術者がどういう自覚を持って生きる かということと,事に当たって自立した判断が出来る ことが重要である.さらに倫理的判断は自立した技術 者になればおのずと判断できるものと考えられる. 社会の技術者に対する真のニーズは,盲目的に産業 に奉仕する技術者ではなく,社会に奉仕する技術者で ある.このニーズに応えるためには,技術の専門性を 磨くだけではなく,技術を批判的・反省的に考えるこ とができる思想や哲学や宗教に対する感受性を磨かな ければならない.科学技術や技術者の社会的影響力が 増大している今日において,工学教育のカリキュラム の中に科学技術を批判的・反省的に検討する視点を持 った科目が存在することは必要である. しかしJABEE2)の認定基準の基準1にある「(a) 地球的視点から多面的に物事を考える能力とその素 養」や「(b)技術が社会や自然に及ぼす影響や効果, および技術者が社会に対して負っている責任に関する 理解(技術者倫理)」は,JABEE認定を受ける受けな いにかかわらず,今日の工学教育に本来必須であるべ きでありながら欠如してきた視点である.JABEEを 契機とした「技術者倫理教育」の広がりは絶好のチャ ンスであり,上記分類の1や2の意義を否定しないが それにとどまらず,3の可能性を追求すべきであると 考える. 以下,「技術者倫理」の授業の経験について,授業