Controlled Fusion and Plasma Physics

著者は「核融合のためのプラズマ物理」[1]を1976年に著 し,核融合研究に携わる研究者や,その道を志す学生を指 導してきた.英訳がMIT Pressから出版されて世界標準と なった前著が世に現れたのは,まさに3大トカマクの計画 が始まり臨界相当条件のプラズマ研究への幕開けの時期で あった.その後のH-mode の発見と大規模で多様な実験そ して理論の進展に基づいてITERが建設されLHD研究が行 われる今日,新たな視野で核融合のためのプラズマ物理を 整理したものが本書である. 本書に先立って,著者は核融合のためのプラズマ物理学 の教科書[2‐4]を継続的に世に送ってきた.それらの流れ を見ると,著者のメッセージには次のような重点があるよ うに思われる.即ち,閉じ込められたプラズマが日常接す る物質と根本的に異なる性質を持つことを説明する中で, 特に「形が性質を変える」というべき特質を力説している. 配位や磁場のトポロジー,不均一性の効果や不安定性,誘 電テンソルの詳細にも及んで,核融合プラズマに関する物 理学的表現を与えている.そして[1]から[2‐4]へと,世 界の研究の進展に応じて,MHDとマックスウェル分布の プラズマの線型応答関数から,高エネルギー粒子のダイナ ミックスの効果,非線型効果,輸送障壁,閉じ込めデータ ベースの蓄積等へと,説明の幅を拡げている. 研究の最前線を博捜する姿勢に貫かれつつ,本書に新た に盛り込まれたものは,ITER時代を迎えるという著者の 時代認識ではないかと思う.本書は,冒頭の入門的記述の 後,まず(第一部)ITERに至るトカマクプラズマの現状と 諸問題(物理)をまとめ,先進トカマクに触れ,次に(第二 部)その他の閉じ込め方式を通覧している.そこではそれ ぞれの核融合装置としての物理を説明するなかで,その配 位によって特にハイライトされる物理に集中し,研究の多 様性を述べている.そして(第三部)磁化閉じ込めプラズ マの諸過程を説明している.線型MHD安定性理論や線型 応答の説明に加えて,実験を理解する上で必要かつ有用 な,テアリングモードの非線型理論や,最新の非線型シ ミュレーションや帯状流の理論などを紹介しており,非線 型過程が実験において具体的に取り組まれる時代が到達し たこともあらわしている.著者は「この分野に携わった研 究者達の業績の一端を読者に伝えたい」と[4]に書いてい る.濱田座標(自然座標)に関する説明を始め,日本で生 まれた研究を世界に明示しようとする著者の意向が伺え る. 核融合やプラズマに関して日本が世界の最先端に位置す るということは,世界標準になるような教科書を著すこと も含まれる.現在の核融合研究最前線で論じられている 種々の物理過程理解の基礎として,本書は世界中で読まれ るだろう.