硫酸化フコース多糖とフコース含有コンドロイチン硫酸は、棘皮動物の組織中に見い出されてきた主要な硫酸化多糖である。ナマコの結合組織には、多量のフコース含有コンドロイチン硫酸が存在する。この多糖は、コンドロイチン硫酸様の構造を示すが、β-D-グルクロン酸の3位に結合しそこから伸展する多数の硫酸化α-L-フコース(6員環)を有している。メチル化分析とNMRスペクトルによる解析から、枝分れフコース中のグリコシド結合の位置および硫酸化部位には、多様性があることが分かった。我々は、3,4-ジ-O-硫酸化-α-L-フコース(6員環)単位がグリコシド結合(1→2)を介して、4-O-硫酸化-α-L-フコース(6員環)に結合した2糖単位が主要成分であることを提唱した。これらのナマコのグリコサミノグリカンにみられる珍しいフコースの枝分かれ構造は、コンドロイチン硫酸骨格へのコンドロイチナーゼ類やヒアルロニダーゼ類の接近を妨げる。我々は、フコースの枝分かれ構造により、海洋環境中において存在する微生物の作用でナマコの体壁が消化されずにすむのではないかと考えている。棘皮動物由来の硫酸化フコース多糖は、4糖の繰り返し単位を有し、各残基は1→3-結合α-L-フコース(6員環)である。しかし、それらは、硫酸化の程度および位置において差異を示す。ウニのフコース多糖は次の構造を持つ:[3-α-L-Fucp-2(OSO3)-1→3-α-L-Fucp-4(OSO3)-1→3-α-L-Fucp-2,4(OSO3)-1→3-α-L-Fucp-2(OSO3)-1]nそして、ナマコでは次の構造を持つ:[3-α-L-Fucp-2,4(OSO3)1-3-α-L-Fucp-1→3-α-Fucp-2(OSO3)-1→3-α-L-Fucp-2(OSO3)-1]nこの型の通常構造に関する報告は、これまでに見当たらず、褐藻類由来の同様な1→3-結合α-L-フコース(6員環)を骨格とする硫酸化フコース多糖類における無秩序な硫酸の置換構造と対比的である。棘皮動物において報告された硫酸化多糖は、動物のグリコサミノグリカンや海洋藻類の硫酸化多糖と共通の性状を有する。この観察は、これらの巨大分子の分子進化に関して興味ある疑問を喚起する。さらに、棘皮動物由来の硫酸化多糖は、生体高分子の生物活性あるいは工業的応用への新しいアプローチをデザインするうえで重要であろう。
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