Planning for compact mixed-use development from the perspective of residents: ─用途混在と性能規制に対する居住者の意識─

我が国では,少子高齢化が急速に進んでおり, そのことがもたらす問題について各方面で議論が されている。労働力人口の減少,社会保障費の増 大,インフラ維持管理の困難などはその代表的な 例である。少子高齢化への対応は都市計画におい ても求められており,とくに都市の縮小に応じた 居住環境整備は,政府が重点的に取り組みを進め ている課題である。本特集のテーマである立地適 正化計画は,そのための有力な施策的枠組みとし て期待されている。 人口の減少は,開発圧力の低減や空き家・空き 地の増加を引き起こし,都市計画において,市街 地の拡大を前提としたこれまでの「規制」という 考え方が必ずしも有効に機能しない場面を生じさ せている。改正都市再生特別措置法が掲げる「コ ンパクトなまちづくり」と「公共交通によるネッ トワーク」は,このような縮小社会に対応し,地 域の状況に応じた都市のコンパクト化を弾力的に 推進することを目的としている。 ところで,このような都市のコンパクト化にお いては,さまざまな都市機能を計画的・誘導的に 集約することに目標が置かれる。いわゆる「徒歩 で生活できる範囲に多様な用途が立地する」とい うコンパクトシティ理念の実現化である。ただ, そのためには,居住の最低基準を事前確定的に定 めるという既成の手法だけでは対応することが難 しい。たとえば,機能集約のための(あるいは機 能集約にともなう)計画的な用途混合は,住宅地 における土地利用の純化を図るという用途地域の 考え方と合致しない部分がある。そのような問題 に対応しうる新しい手法として,建築物の用途・ 形態で環境に影響を与えると判断される項目を 「性能」ととらえ,良好な環境を守るために必要 な技術的基準を性能評価により定める考え方(性 能規定)も提唱されている1,2)。 一方で,都市の「適正な」コンパクトさ,「適 度な」機能集中の程度とはどのようなものであろ うか。上述の性能規定の文脈でいうと,現状の用 途地域に照らせば建築不可能な用途であっても一 定程度の条件(性能)を満たせば建築を認めよう とする点が性能規定のもつ柔軟性であるが,何を もって「一定程度の条件を満たす」と判断すれば よいのであろうか。 これらの問題に対しては,各施設へのアクセシ ビリティ最適化やインフラ整備の費用便益分析な どの観点からの議論が見られる。そのような議論 とともに,居住者にやさしい都市機能誘導を考え るにあたっては,機能集中や用途混在に対する居 住者の意識という観点からの議論も重要である3)。 一般に居住者は,住宅地の居住環境は守りたいと 居住者の視点からの都市機能誘導 ─用途混在と性能規制に対する居住者の意識─ Planning for compact mixed-use development from the perspective of residents