Grip Force Control by Detecting the Internal Strain Distribution Inside the Elastic Finger Having Curved Surface

ヒトは物体を,必要最小限の力で把持し持ち上げることが できる.これは一見簡単な制御のようであるが,実際の制御 系は複雑である.すなわち,指先に配置された多数の触覚受 容器により皮膚の複雑な応答を検出し,これを末端及び中枢 神経系で処理して対象物に応じた適当な把持力を求めた後 に,筋に指令値を与える制御を行っていると考えられる. ロボットハンドに把持動作を行わせる場合にも,同様に把 持力を制御する必要がある.重量や形状が既知で剛性の大き い物体を取り扱うことの多い工業用ロボットにおいては,物 体を握りつぶす可能性は小さいため,把持力はある一定値以 上であればよく,簡単な圧力センサで把持力を検出すれば十 分な場合が多い.これに対し,近年必要性の高まっている医 療用サージェリーロボットや介護ロボット,家事ロボットの ような,生体などの形状が複雑で柔軟な物体をハンドリング するロボットのハンドでは,物体を握りつぶさないように把 持力を高精度に制御する必要がある.また,工業用ロボット で多種の部品を取り扱う場合や,重量が変化する物体を把持 する場合にも,把持力を高精度に制御する必要がある.これ らの要求に鑑み,これまでに様々な物体把持手法が提案され ている.その多くは物体が滑り始める際の滑りを検出するも の,または摩擦係数を検出するものである(1),(2).しかし,物 体が滑りはじめる際の滑りを検出する手法では,ロボットハ ンドと物体との相対位置がわずかながら変化してしまい,物 体を高精度に位置決めすることができない.また,摩擦係数 を検出する手法によれば物体が滑りはじめない範囲の適当な 把持力を求めることができるが,装置が複雑になるという欠 点がある.また,いずれもヒトの行う把持とは手法が異なっ ている.一方,ヒトの把持力制御には指表面の初期局所滑り が重要な役割を担っていることが指摘されている(3),(4)ので, 初期局所滑りを物体の把持力制御に用いる研究も行われてい る(1),(2).しかし,形態と物理量の関係,すなわち,センサ表 面の形状と,これに伴う初期局所滑り状態および接触力や内 部ひずみ分布の関係は十分に明らかにされていない.特に, 指腹部のような曲面状の弾性体の初期局所滑りに着目した研 究は行われていない. 他方,ロボットハンドに触感覚を検出させるために,弾性 体内に複数のセンサを分布させる,曲面状の弾性体内にセン サを配する,といった試みも盛んに行われている(1),(2),(5)~ (8).これらの研究で着目する形態はヒトの触覚受容機構のそ ────────────────────────────────── * 原稿受付 平成9年3月21日 *1 正員,慶応義塾大学理工学部(〠223 横浜市港北区日吉3-14-1) *2 学生員,慶応義塾大学院 *3 慶応義塾大学 曲面状弾性体の内部ひずみ分布検出に基づく把持力制御法