A Study on MALARIA CONTROL PROGRAM in East Lombok, Indonesia : In-Depth Interviews and Collecting Baseline Data and Epidemiological/Sociological Survey (CBDESS) - Part 2-

〔抄 録〕 マラリアは,毎年 2億から 3億人の患者と,150万から 200万人の死者を出す人 類にとって最悪の感染症の一つである。日本では稀な病であるからといって,21世 紀の地球社会で,毎日 3千人もが犠牲になる悲劇に無関心のままでよいだろうか。 マラリア問題の解決は,アジアやアフリカだけではなく,人類共有の課題であり,先 進国の責任は重い。 マラリアは,感染経路や発症メカニズムの医学的研究が進み,治療や予防が可能と なっている。ではなぜ,現在もエイズに匹敵するひどい被害が続いているのだろう か。マラリア問題の根底には,医学的な要因だけでなく,劣悪な衛生環境や栄養状 態,経済的貧困,社会資本不足,ジェンダー差別,教育の欠如など,人間貧困の悪循 環からくる生存権のはく奪状況があるのだ。 インドネシアでは,2005年の異常気象で,雨期の 11月から 3月にかけて激しい 集中豪雨が襲った。洪水はマラリア原虫を運ぶハマダラ蚊の大発生を引き起こし,マ ラリア感染がアウトブレイク(大爆発)した。森林やラグーン(潟湖)の乱開発,都 市化と工業化など社会変化による複合要因もアウトブレイクの背景にある。 われわれは 2006年 4月から 3年計画で,インドネシア国立マタラム大医学部と国 際共同研究「マラリア・コントロール・プログラム」を進めている。そして,バリ島の 東にあるロンボク島で,マラリア感染の社会疫学的調査(CBDESS)を実施した。同島 では 05年のアウトブレイクで,千人以上が感染し多くの死者が出たといわれている。 CBDESS 調査では,マラリア被害のあった村々の一軒ずつを訪ね,992人の世帯 代表者から聞き取り調査を行った。87%の世帯で,貧しさから 5歳までの子どもを 入院させることができずに亡くしていた。また,半数以上が学校に行っていないか, 社会学部論集 第 46号(2008年 3月)