Environmental factors influencing Porphyra (Nori) farming in Tokyo Bay : Long-term changes in inorganic nutrients and recent proliferation of diatoms

はじめに 日本のノリ養殖の歴史は,17世紀末 18世紀初頭頃に東京 湾で始まったとされている(宮下,1970).現在は有明海 や瀬戸内海が主要なノリ養殖漁場として知られているが, 東京湾の千葉県沿岸では,千葉北部,盤洲周辺,富津岬周 辺の3地区で現在でも盛んにノリ養殖が行われている (Fig. 1).千葉県漁業協同組合連合会共販資料によれば,2005 (平成 17)年度のこれら 3地区における生産量は,東京湾 生産量の96%にあたる約5億枚で(金額で約50億円),全 国の4%にあたる. 東京湾のノリ養殖はかつて支柱式と浮き流し式が併用さ れていたが,現在の主漁場である富津地区ではすべて浮き 流し式であり,離岸距離数kmの範囲までを漁場として利用 している.東京湾の水質環境は昭和 40年代をピークに著 しい富栄養化が続いている(高田,1993; 野村,1995; 松 村ほか,2001など).浮き流し式養殖は支柱式より沖合域 を漁場として利用するため,湾内の栄養塩環境の変動を敏 感に受けやすいと考えられる. ノリの主な生産阻害要因としては,赤腐れ病,白腐れ病 などのノリが感染する病気,バリカン症,色落ちなどが知 られている.そのうち,感染症については生産管理のシス テム化により対策がとられるようになっている.その一方 で,近年,ノリの色落ちによる被害が頻発するようになり, 産業的に甚大な被害をもたらしている(小谷ら,2002). 色落ちしたノリは,市場に出荷されずに廃棄されることが 多いため,被害金額の算定は困難であるが,千葉県漁業協 同組合連合会の共同販売時の等級で,色落ちと判定された ものの量が,多い年で 1000万枚を超えることがあると推 水産海洋研究 72(1) 22–29,2008 Bull. Jpn. Soc. Fish. Oceanogr.