Anaerobic Treatment of Various Wastewater from the Process of Manufacturing Pulp

紙パルプ製造工程から排出される排水の処理法としては好気性処理法が一般的であり,嫌気処理方法の適用事例は少ない。今回,紙パルプ分野での嫌気性排水処理の最善な利用方法を見極めるため,現状は活性汚泥処理している各工程排水,すなわちDIP工程排水,晒工程排水,蒸解工程排水を原水とした現場実証テストを約1年間に渡り実施し,以下の結果を得た。(1)DIP工程排水は一般的に嫌気処理は不適であると考えられてきたが,嫌気処理が十分可能であることがわかった。好気処理と比較して,ランニングコストの低減が十分図れるものとみられる。しかしながらガス発生量は少なく,後述の蒸解工程排水に比較するとその効果は小さくなる。(2)晒工程排水は除去率,ガス化率が低く,嫌気処理に適していない。(3)蒸解工程排水については針葉樹系排水の嫌気処理は難しいと従来言われてきたが,針葉樹系が半分を占める蒸解工程排水であっても馴養方法を工夫することで高負荷運転が可能となることがわかった。さらに,蒸解工程排水中,特にCODcr濃度の高いファールドレンについても,同様の馴養方法の工夫により高負荷運転が可能となることがわかった。以上の結果,現在紙パルプ製造工程排水への嫌気性排水処理の適用事例は少ないが,馴養方法の工夫や他の排水処理方法との適切な組合わせなどにより今後その適用範囲は広がってゆくものと考えられる。