Development of the Proactive Desk II – A New Haptic Display to Drive Multiple Objects

The Proactive Desk is a force feedback system using a 2-DoF linear induction motor (LIM) designed for ordinary desktop operations. The system provides two-dimensional force feedback on a desktop surface, but only for a single object. For multi-user cooperative tasks, we propose a new-generation Proactive Desk II which can control multiple objects simultaneously, and describe a prototype system based on our approach using a new style LIM. The system employs a cluster of coils for synthesizing traveling magnetic fields underneath the desktop. These magnetic fields simulate a local region of the field created by our first-generation system, can drive multiple objects individually. 1. はじめに 現在のコンピュータとのインタラクション方法は,マウ スやキーボードなどの入力装置を用い,出力装置であ るディスプレイ上のウィンドウやアイコンを操作する方 式が一般的である.これは,コンピュータからの出力で ある視覚情報を人が処理し,画面上のポインタを視覚 的なフィードバックで操作しながら入力する,いわば視 覚主体のインタラクションである. これに対して,他の五感もメディアとして積極的にイ ンタラクションに利用し,より豊かな操作環境を実現し ようという試みが活発になってきている.例えば音声, すなわち聴覚情報は,マイクやスピーカなどの入出力 装置の開発の容易さから古くより利用されてきたメディ アである.さらに近年では,味覚,嗅覚,あるいは触覚 や力覚の情報提示を目的とした装置の開発が盛んに 進められている[1]. 中でも,コンピュータとのインタラクションという側面 から見た場合,力覚情報の利用は有効であると考えら れる.コンピュータからの出力に力覚情報を付与する ことにより,人は触覚をフィードバックに利用することが できるようになる.これによりボタンの位置を手探りで見 つけたり,ガイドをなぞるように操作するなど,操作性 の向上や,より直観的なインタラクション環境が構築で きると期待される. しかしながら既存の力覚提示装置の多くは,構造上 の問題から同時に複数の力覚提示が行えず,複数人 が同時に力覚を体験可能な装置は少ない.既に著者 らが提案した,リニア誘導モータ (Linear induction motor, LIM)の原理を用いたデジタルデスクのための 力覚提示装置 Proactive Desk[2]も,同時に提示可能 なのは単一の力覚情報に限られた. そこで本研究では,複数の異なる力覚情報を同時 に提示可能な新しい構造の LIM を提案し,複数のユ ー ザ が 同 時 に 体 験 可 能 な 新 し い 力 覚 提 示 装 置 Proactive Desk II を実現する(図1). 2. 関連研究 2.1 デジタルデスクと力覚提示 デジタルデスクとは,従来のマウスとディスプレイを 介したユーザとコンピュータとの関係を大きく変化させ, 両者間の境界をより曖昧にさせるインタラクション環境 である. 1991 年に Wellner が提案した最初のコンセプ ト[3]では,机の上にコンピュータからの出力を映像とし て投影し(Display),マウスの代わりにユーザが自身の 手やジェスチャで,画像であるアイコンや,机上の実物 体を直接操作することで指示を出す(Control).さらに は,カメラ等を用いることで机上の書類の文字や物体 の状態をデジタル化して入力する(Registration),シー ムレスな入出力の操作環境となっている.ハードウェア や機能面での高度化を試みた様々な実現例が報告[4, 5]されているが,基本的な機能は上記の通りである. デジタルデスクの利点としては,机を媒介としてユー ザがコンピュータと直接的にインタラクションできること である.さらには,机を囲むようにユーザが集まることに より,協調して作業を行う場として利用しやすい点が挙 げられる.過去の研究においても,大規模な都市設計 のシミュレーションやタスク等のスケジュール調整など に用いられた例が多く見られる[6, 7]. このような従来のデジタルデスク研究におけるコンピ ュータからの出力としては,主に映像と音によるものが ほとんどであり,他の五感については積極的に利用さ れてはこなかった.本研究の目的は,五感の中でも特 にコンピュータとのインタラクションに有効であると考え られる力覚をデジタルデスク環境に付加することにある. 机上の物体の位置を制御したり,操作反力などの物理 的な作用(Reaction)をコンピュータから提示することに より,ユーザは力覚を手がかりとしてより直観的な操作 を行えると期待できる(図2). 図2 デジタルデスク環境における力覚提示 2.2 協調作業環境のための力覚提示装置 既存の力覚提示装置を大まかに分類すると次のよう になる.これらは,いずれも机上の実物体を物理的に 位置制御し,それを把持したユーザにそれらの移動時 の作用を力覚として与える仕組みである. 機械式 機械式のアームやワイヤが取り付けられ た物体を机上で移動させる方式[8]. 永久磁石式 机上の物体に永久磁石を取り付け, 盤面下で平面方向に移動できる永久磁石との吸 引力により物体の位置制御をする方式[9]. 電磁石式 盤面下に電磁石を配置し,斥力と吸引 力を使い,机上の永久磁石が取り付けられた物体 の位置制御をする方式[10]. LIM 式 盤面下の2自由度 LIM で進行磁界を発 生し,机上の非磁性導体に推進力を生起させ,駆 動させる方式[2]. ここで,2次元的な机上の作業を対象とするデジタ ルデスク環境の構築を目的とした場合,機械式では作 業環境が広くなるにつれ装置が大きくなるうえに,机上 の空間を遮る物が多くなるためシームレスな作業環境 を構築しがたい.その他の方式は見た目を従来のデ ジタルデスクと同等に保てる利点があるが,永久磁石 式では盤面下の機構が常に物体を追従する必要があ るために,原理上応答速度が問題となる.また,磁石 の吸引力を使うため,さほど強い力は得られない. 電磁石式と LIM 式を比較した場合,電磁石式は物 体の位置制御は容易であるが,得られる力覚は位置 制御からの副次的なものとなる.また,永久磁石式と同 様に出力の限界は大きい.これに対して,LIM 式では 物体に推進力を直に生起させるため,位置制御は別 途必要になるが,方向制御や強い力を継続して発生 させることが容易である. 既開発の Proactive Desk は LIM 式による力覚提示 装置である.映像投影スクリーンとしても用いられる机 の下に,1自由度の LIM を2組配置し,机上に置かれ た非磁性の導体(以下,フォーサと呼ぶ)に対して任意 2次元方向の力を発生させる.本装置ではその機構の ほとんどが盤面下に隠されるために,操作時にユーザ の視界を遮る物がなく,また単なる導体片に対して力 を発生させることができることから,シームレスな操作 感を損なうことが少ない.また,位置制御から副次的に 力覚を提示する電磁石式などと異なり,力制御が直接 行える本方式はユーザインタフェースである力覚提示 装置として見た場合,より適していると考えられる. 次に,協調作業環境のためのデジタルデスクとして 考察した場合,複数人が異なる力覚を得るためには, 複数物体を同時に駆動させる必要がある.機械式と永 久磁石式は構造上複数物体を駆動させること自体が 難しく,電磁石式は先に述べたように比較的軽い物体 の位置制御が出来るのみであり,強い力を得ることは 困難である.一般的な2自由度 LIM を応用した既開発 装置も,その構造上単一の物体しか駆動できない. そこで本研究では,従来の利点を保ちつつ複数物 体の駆動が可能な新しい2自由度 LIM を提案し,複 数人が同時利用可能な力覚提示装置を開発する. 3. 複数物体が駆動可能な LIM 3.1 従来の2自由度 LIM の動作原理 (1自由度の)LIM は一般的な回転誘導モータを切 り開いた構造をしており,電力を1次元の運動に変換 する(図3).LIM は磁束を発生させるコイル群からなる 1次側の固定子(Stator)と,力が生起される2次側の移 動子(Forcer, フォーサ)とで構成される.LIM は駆動さ せる軸方向に沿ってコイルを並べ,隣り合うコイルに流 す交流電流に一定の位相差を持たせるように設計す る.簡単には6個のコイルを1組とし,一般的なインバ ータを用いて三相交流を発生させ,これを見かけ上6 相にしてそれぞれに与える.これにより,時間とともに 固定子上を移動する進行磁界 Bが形成される.フォー サは非磁性の導体であり,磁束密度の変化により内部 に渦電流 Iが発生する.この進行磁界 Bと磁界内に置 かれたフォーサの内部に生じる渦電流 Iとが作用し,フ レミング則に従って磁界の進行方向にのみ力 F が発 生する. 大平らが提案した2自由度 LIM[11]は,X,Y 軸用の 1自由度 LIM2台を直交させて上下に配置した構造を 持つ.図4にそれぞれの LIM にて生じる進行磁界の 模式図を示す.