右胃大網動脈を用いた冠状動脈バイパス術後に発症した進行胃癌に対し,胃全摘,D2郭清術を施行した1例

右胃大網動脈(right gastroepiploic artery;以下,RGEA)を用いた冠状動脈バイパス術(coronary artery bypass graft;以下,CABG)後に発症した進行胃癌に対し,胃全摘,D2郭清術を施行した1例を経験した.患者は74歳,男性.2000年に不安定狭心症に対しRGEAなどをグラフトに用いたCABG3枝を前医で施行された.2007年3月貧血を認め,精査で3型胃癌と診断された.術前の血管造影検査で右冠状動脈は根部で完全閉塞しており,その末梢にバイパスされたRGEAグラフトの血流は良好に保たれていた.右冠状動脈根部に対して経皮経管的冠状動脈形成術(percutaneous transluminal coronary angioplasty;以下,PTCA)が可能と判断し,D2郭清術を安全に行うため,PTCAを施行したのちに胃全摘術を施行した.RGEAを用いたCABG後の進行胃癌症例に対し,術前に低侵襲であるPTCAを行い,安全にD2郭清術を施行しえた1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.