誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES)及び誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)を用いて,天日塩中不溶粒子成分の多元素分析を行った.天日塩試料30gを純水1lに溶解し,この溶液を孔径0.45μmのメンブランフィルター(セルロースアセテート製)で濾過し,濾液を可溶成分,フィルター上に残った成分を不溶粒子成分として分離した.不溶粒子成分は,メンブランフィルターごと混酸(硝酸/フッ化水素酸/過塩素酸)による酸分解を行って溶液化し,ICP-AES及びICP-MSにより測定したところ,%~サブμgg-1の濃度範囲で存在する36元素を定量することができた.既報で報告した天日塩の可溶成分中の元素濃度と合わせて考えると,アルカリ元素,アルカリ土類元素,Mo, Cd等は主に可溶成分に,またAl, Ti, V, Fe, Co, Ga, Y, Sn,希土類元素(REEs)等は主に不溶粒子成分に存在することが明らかになった.これらの不溶粒子成分中元素のうち,Fe, Co, Y, Sn, REEs等は酸添加によってその一部が溶出することから,海水中でコロイド態粒子としても存在していることが示唆された.これに対し,Mn, Cu, Zn, Pbは可溶成分及び不溶粒子成分の両成分に存在し,天日塩中で複数の化学形態で存在することも明らかになった.また,天日塩中不溶粒子成分及び海洋底質標準試料中の元素濃度を比較したところ,両者の間には極めて高い相関があることが明らかになり,天日塩中に取り込まれた不溶粒子成分は堆積物の重要な起源の一つであることを示す結果が得られた.