[Metastatic brain tumor].

全国集計 症例 51.0% 肺 癌 10.3 乳 癌 6.9 腸・直腸癌 5.3 胃 癌 5.1 腎・膀胱癌 4.3 頭 頚 部 癌 3.2 子 宮 癌 13.9 そ の 他 6,909 例 数 転移性脳腫瘍は,癌の第 4病期(stageIV)に当たり, 以前はその存在が認められても治療の対象から外され ることが多かった脳腫瘍である.脳腫瘍全体の 14.7% を占め,神経膠腫,髄膜腫,下垂体腺腫に次いで多い. 原発巣は表 1のように肺癌が最も多い.症例の 61.3% が 50~69 歳のいわゆる癌年齢に発症している. 一般的に原発巣のコントロールが比較的良く,少なく とも 6カ月以上の生存が見込める症例が手術適応とな り,手術により局在症状,脳圧亢進症状の除去を図る ことにより健全な quality of life を回復,維持すること が可能である.我々の経験した転移性脳腫瘍の症例を 紹介する. 症例:64 歳,女性.1997 年 9 月初旬より,頭痛が出 現.この頃から左視野が見にくく,歩いていて左側の 物にぶつかりやすくなった.10 月 20 日他院を受診し, 左同名半盲を指摘され,CT, MRI にて脳腫瘍を疑われ 10 月 31 日附属第二病院脳神経外科に紹介,入院と なった.既往歴,家族歴:特記すべきことはなかった. 入院時所見:意識清明.左同名半盲以外に神経学的 異常は認めなかった.一般血液検査では異常を認めな かった. 画像診断:CTにて右後頭葉に軽度高吸収域腫瘤と その上部に低吸収域の嚢胞部分を認める.腫瘤全体の 大きさは約 3×2×5 cmである.mass effect による約 1 cmのmidline shift も伴っている(図 1). MRI では同部に 3×2×5 cmの T 1 で低信号,T 2 で高信号の腫瘤を認める.実質部分はガドリニウムエ ンハンスメントを受け,一部多房性の嚢胞を形成して いる(図 2). 胸部X-P で右肺門部に径約 2.5 cmの腫瘤陰影を認 める(図 3). ポイント:転移性脳腫瘍の症状に特徴的なものはな く,頭蓋内悪性脳腫瘍一般の症状である頭蓋内圧亢進 症状(頭痛,嘔気,精神症状)と病巣の存在する部位 の局在症状が主体である.CT, MRI 上境界明瞭な腫瘤 でいわゆるリング状エンハンスメントを呈するものが 多いが,本症例のように嚢胞を形成し嚢胞周囲と実質 部分がエンハンスを受ける場合もある.膠芽腫などが 白質部に発生するのに対し転移性脳腫瘍の多くが皮髄 境界に発育し,画像上このような所見があった場合, 全身の悪性腫瘍検索が必要である. 入院後の検査,経過:CT, MRI の所見と,胸部レン トゲン所見から肺癌原発の転移性脳腫瘍を疑い,外科 -症例から学ぶ-