Successful pregnancy and delivery in a patient on chronic hemodialysis

血液透析患者の妊娠を継続させ, 正常な分娩を行わせることは困難であるが, 今回我々は血液透析歴4年になる32歳女性の妊娠, 分娩で母児ともに順調な経過をとった症例を経験したので報告する.症例は32歳の1回経妊0回経産の婦人. 昭和50年4月, 糸球体腎炎と診断され, 昭和52年12月より慢性腎不全のもとに血液透析を開始した. 月経歴は血液透析開始後も変化はみられなかった. 昭和55年7月に結婚, 昭和56年9月初旬に腹部膨隆に気づき産婦人科を受診し, 妊娠24週と診断された. 妊娠31週で切迫早産と診断され, 妊娠および胎児管理のため当科に緊急入院した. ただちに産科で妊娠, 胎児の管理を行う一方, 妊娠38週まで妊娠の継続を目標に, 1) 貧血の改善, 2) 頻回透析により血清BUN, Crを低値におさえる, 3) 食事は普通食, の如く決定した. 切迫早産の徴候が再度みられた妊娠33-34週はFOY透析, 以後は通常の半量のヘパリン化透析, 同時に凝固系のチェックを週3回の割に行った. 昭和56年11月14日, 妊娠38週6日に経膣分娩にて男児を出産, 出血量1,036g, 児の体重2,070g, apgar指数10点, 外表奇形なく低血糖症状がみられたものの良好な経過をとった. 母親は出産後1度中等量の出血をみたものの透析による出血への影響もほとんどみられず, また透析時の困難もなく良好な経過であった.

[1]  R. Pepperell,et al.  Haemodialysis in the Management of Chronic Renal Failure During Pregnancy , 1970, The Australian & New Zealand journal of obstetrics & gynaecology.

[2]  R. Dandrow,et al.  Clinical study of hypertensive disease in pregnancy. , 1961, American journal of obstetrics and gynecology.