Lactobacillus bulgaricusとStreptococcus thermophilusの共生的ならびに拮抗的関係について

Lactobacillus bulgaricus 10株(畜試株5株,国際酪農連盟専門小委員会E44の議長Prof. R. NEGRIから分譲された菌株2株,IDF株と略,ヨーグルトよりの分離株3株),Streptococcus thermophilus 7株(畜試株2株,IDF株2株,分離株3株)を用いて両菌間の共生を検討した.その結果はつぎのとおりである.L. bulgaricusはギ酸で生育が促進されたが,S. thermophilusのギ酸生産量は10ppm以下(37°C,16時間後)と少量であった.L. bulgaricusは培養2~3時間でアミノ酸を蓄積させたが,アミノ酸量は菌株間で差がみられた.ギ酸の添加はタンパク分解力に影響を及ぼさなかった.S. thermophilusはL. bulgaricusのpH4.6での可溶性画分やカサミノ酸で生育が促進された.S. thermophilusは殺菌乳中では長連鎖を示し,混合培養やカサミノ酸,L. bulgaricusのpH4.6での可溶性画分を添加すると2連ないし数個の短連鎖となった.S. thermophilusの生菌数は混合培養で著しく増加したが,これは短連鎖となりコロニー形成単位が増加したためであり,直検法での総菌数は増加しなかった.以上の知見より一般にL. bulgaricusはS. thermophilusが生産するギ酸,その他を利用し,正常な分裂,増殖が可能となり,S. thermophilusはL. bulgaricusの生育にともなって蓄積されるアミノ酸により代謝活性が高められる共生が存在することが確かめられた.しかしS. thermophilus 510はL. bulgaricusと共生が認められない菌株で,L. bulgaricus AYのようにタンパク分解力の強いL. bulgaricusとの組合せによっては生育が著しく阻害されてしまう特異な菌株であった.