How Olin College Realized and Succeeded in Engineering Education Reform

工学教育(J.of JSEE), 60–5(2012) 1.はじめに フランクリン・W・オーリン・カレッジ・オブ・エン ジニアリング(Franklin W. Olin College of Engineering,以下オーリン・カレッジ)はアメリカ,ボストン 郊外の工学系大学である.オーリン・カレッジは2002 年に学生受入を開始した若い大学であり,学生数も各 学年80人程度ときわめて小さい.それにもかかわらず, 開学当初からアメリカの工学教育関係者のあいだで注 目の的になっている.IEEE Spectrumは,オーリン・ カレッジが初めて卒業生を出した2006年に「オーリン の実験」と題する記事で,「ここ数十年の工学教育 の中で最も野心的な実験」と評した.本稿は,オーリ ン・カレッジの取組みの紹介を通じて,アメリカにお ける工学教育改革の方向性の一つを明らかにすること を目的とする. 筆者らは,2011年秋にオーリン・カレッジを訪問する 機会を得た.早朝から夕方まで,学長をはじめ,何人も の教員や学生たちと意見交換をし,また複数の授業を 見学した.また,その直後にMITやNational Academy of Engineering,American Society for Engineering Educationを訪問し,そこでもオーリン・カレッジの 高い評判に触れることができた.以下では,オーリ ン・カレッジの概要,カリキュラムの概要,キャップ ストンを紹介し,最後に考察を加える.紹介する内容 は筆者らが直接見聞きしたことだが,一定の公平性を 保ち,根拠となる資料を明確にするために,できるだ け既発表の文献資料の中から抽出する形で再構成して 紹介したい.