An Analysis of Lung Cancer in Nagano Prefecture Based on Cancer Registry Data

━━ Objective. The death rate due to lung cancer in Nagano Prefecture has been the lowest in Japan for over 20 years. Using data from the regional cancer registry and hospital-based cancer registry, we examined the incidence of lung cancer in Nagano Prefecture and analyzed the reasons for the low mortality rate. Methods. We analyzed 1,759 cases of lung cancer diagnosed in 2013 and registered in the Nagano regional cancer registry, and 3,087 cases treated for lung cancer in cancer hospitals in Nagano Prefecture from 2012 to 2014. The data were compared with the national data in order to assess the characteristics of lung cancer in Nagano Prefecture. Results. The age-adjusted incidence rate of lung cancer in Nagano Prefecture was 35.4 per 100,000, while the national rate was 41.4 per 100,000. Among the lung cancer cases in Nagano Prefecture, 36.2% were found in the localized stage, which was greater than the national value of 32.5%. A comparison of the clinical stages of cases in both the regional and hospital-based registries indicated that a greater proportion of cases were found in the localized stage, while the proportion of cases found with metastases tended to be lower in Nagano Prefecture than was observed nationally. The incidence/mortality rate of lung cancer in Nagano Prefecture was 1.71, which was the second highest among all prefectures in Japan. This was much higher than the national value of 1.54. Conclusion. It is suggested that the low incidence rate and high early detection rate may contribute to the low mortality rate of lung cancer in Nagano Prefecture. (JJLC. 2019;59:348-353) KEY WORDS━━ Cancer registry, Age-adjusted mortality rate, Incidence rate, I/M ratio Corresponding author: Tomonobu Koizumi. Received November 5, 2018; accepted June 1, 2019. 要旨━━目的.長野県の肺がん死亡率は都道府県別で 最低とされる.今回,地域がん登録および院内がん登録 データを用いて長野県の肺がんの状況について分析し, 低死亡率との関連を探る.研究方法.長野県地域がん登 録に登録された 2013年に新たに肺がんと診断された症 例(1,759例)および長野県で院内がん登録データを国立 がん研究センターに提出しているがん診療連携拠点病 院,地域がん診療病院において 2012~2014年に自施設で 肺がんの初回治療を実施した症例(3,087例)を対象とし て分析を行い,全国値と比較した.結果.長野県の肺が ん年齢調整罹患率は 35.4(10万対)で全国値の 41.4(10 万対)を下回り,発見時の限局割合は 36.2%で全国の 32.5%を上回っていた.臨床進行度・病期分布では,地 域,院内がん登録ともに,長野県は全国と比較し限局/I 期の割合が高く,遠隔転移の割合が若干低いという傾向 を示した.長野県の肺がん罹患/死亡比(I/M比)は 1.71 と全国値の 1.54を上回り,全都道府県中 2番目に高かっ た.結論.長野県では低い罹患率,高い早期発見率が, 1長野県がん登録室;2信州大学医学部附属病院診療録管理室; 3信州大学医学部包括的がん治療学教室. 論文責任者:小泉知展. 受付日:2018年 11月 5日,採択日:2019年 6月 1日. (肺癌.2019;59:348-353) 2019 The Japan Lung Cancer Society Lung Cancer in Nagano Prefecture―Tanaka et al Japanese Journal of Lung Cancer―Vol 59, No 4, Aug 20, 2019―www.haigan.gr.jp 349 低い肺がん死亡率の要因に寄与していることが示唆され た. 索引用語━━がん登録,年齢調整死亡率,罹患率,I/ M比 目 的 悪性新生物(がん)は 1981年より本邦の死因第一位で あり,中でも肺がんによる死亡者数は 1998年に胃がんを 抜いて一位となって以降,死亡者数は最多である.本邦 の肺がんの 2017年の死亡者数は 74,120人であり,全が ん死亡の 19.9%,全死因の 5.5%を占めた.1 また,世界の 2016年の肺がん死亡者数は 1,707,000人で全死因の第六 位であり,過去 15年以上世界の主要死因の一つとなって いる.2,3 がん生存率の国際共同調査 CONCORD study (2005~2009年診断症例)によると,日本の肺がんの 5 年生存率は他国と比べて高いことが示されたが,4,5 本邦 2006~2008年診断症例の 5年生存率は,全がんの 62.1% に対し肺がんは 31.9%と低く,部位別では膵臓がん,胆 のう・胆管がんに次ぎ 3番目の低さである.6 死亡者数 が多く,生存率が低い肺がんの死亡率減少は,行政が進 めるがん対策の上でも最重要事項といえる. 一方,長野県の肺がん年齢調整死亡率は統計が開始さ れた 1995年以降 20年以上,全都道府県中最も低い状態 を維持しており,7 本県の低い全がん死亡率に大きく寄 与している.本県の低い肺がん死亡率の原因解明は,よ り効果的ながん対策立案の一助となりうる. 地域がん登録(2016年より全国がん登録と名称変 更)は,地域(主に都道府県単位)において新たにがん と診断/診療された症例を登録する,がん罹患数の実態把 握に不可欠な唯一の仕組みである.長野県では 2010年に 事業が開始された.一方,院内がん登録は,がん診療連 携拠点病院の指定要件の一つとされ,各病院においてが んと診断/治療された症例を登録することで,各々の病院 のがん診療の評価に役立てられる. 今回,長野県地域がん登録および院内がん登録データ を用いて,長野県の肺がんの状況について考察し,その 特徴を分析した. 対象と方法 長野県地域がん登録に登録された 2013年に新たに肺 がんと診断された症例(1,759例)および長野県で院内が ん登録データを国立がん研究センターに提出しているが ん診療連携拠点病院,地域がん診療病院において 2012~ 2014年に自施設で肺がんの初回治療を実施した症例 (3,087例)を対象とした. 国立がん研究センターが公表している部位別 75歳未 満年齢調整死亡率を用いて,7 2013年肺がん死亡率を都 道府県別に抽出し,長野県の状況を観察した. 2013年の地域がん登録データを用いて都道府県別に 肺がんの年齢調整罹患率を算出し,長野県の値を全国値 および都道府県別に比較した.年齢調整罹患率は,各都 道府県の年齢階級別罹患率×基準人口(昭和 60年モデル 人口)集団のその年齢階級の人口の各年齢階級の総和/ 基準人口集団の総人口により求めた. 同じく 2013年の地域がん登録データを用いて都道府 県別の限局発見割合を算出し,早期発見の状況を観察し た. 加えて,地域がん登録データを用いた進行度別割合, 院内がん登録データを用いた病期別割合をそれぞれ算出 し,全国値と比較した. さらに,地域がん登録データを用いて,生存率評価の 一つとされる8肺がんの罹患数(Incidence)と死亡数 (Mortality)の比(I/M比)を都道府県別に算出し,男女 別に全国値と比較した. 地域がん登録および院内がん登録の全国値はそれぞれ 「全国がん罹患モニタリング集計」(MCIJ)9 および「がん 診療連携拠点病院院内がん登録全国集計 報告書」10 よ り引用・算出した.長野県院内がん登録データ利用にあ たっては,信州大学医倫理委員会の承認を得(承認番号 3974),院内がん登録長野県データ利用審査員会に利用申 請を行い,承認を得た(承認番号 2017-2). 結 果 都道府県別の 2013年肺がん 75歳未満年齢調整死亡率 を Figure 1に示す.長野県の肺がん 75歳未満年齢調整 死亡率は 9.7で全国値の 14.7を大きく下回り,全都道府 県中最も低かった. 都道府県別肺がん年齢調整罹患率と臨床進行度分類中 の限局割合を Figure 2に示す.矢印で示す長野県の肺が ん年齢調整罹患率は人口 10万に対して 35.4で全国値の 41.4を下回り,全都道府県中 7番目に低かった.一方,限 局割合は 36.2%で全国の 32.5%を上回り,全都道府県中 8番目に高かった. 2013年の肺がん年齢調整罹患率および 75歳未満年齢 調節死亡率を,男女別に長野県と全国値で比較した結果 を Table 1に示す.男性および女性ともに長野県の年齢 調整罹患率は全国値より低比率(男性 0.84,女性 0.85)で, さらに同年の長野県の肺がん年齢調整死亡率は全国値に Lung Cancer in Nagano Prefecture―Tanaka et al 350 Japanese Journal of Lung Cancer―Vol 59, No 4, Aug 20, 2019―www.haigan.gr.jp Figure 1. Age <75 years old-adjusted mortality rate of lung cancer by prefecture (2013). Diagonal line: national value for the age-adjusted mortality rate, arrow: Nagano Prefecture. 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 16.0 18.0 20.0