An Analysis on the Results of the Achievement Test Carried out by National Institute of Technology in Kure College

工学教育(J.of JSEE), 65–3(2017) 1.はじめに 1.1 高専および呉高専 高等専門学校(高専)とは国公立および私立を含め全 国に57校ある5年一貫制(商船に関する学科は5年6ヶ 月)の工業系専門学校である.後期中等教育段階を含み 高等教育機関と位置づけられ,卒業することで準学士の 学位を得られる. 呉高専は,国立高等専門学校機構(高専機構)が設置 する高専で,機械工学科(M科),電気情報工学科(E 科),環境都市工学科(C科),建築学科(A科)の本科 と呼ばれる4学科からなる.数学については検定教科書 を用いず高専用のテキストを用いて,3年終了時までに 理工学系分野で必要とされる重積分や固有値までを一通 り学ぶ. 1~3年生までの数学の習熟度合いを測り,高専3年 生までの学習内容の総復習を一つの目的として,国立高 等専門学校到達度試験(到達度試験)(表1及びWeb 参照)が平成18年度から例年1月に実施されている.な お,高専機構が到達度試験実施専門部会を発足させ,試 験実施要項骨子を作成した際,出題委員を務めた高専教 員らによる報告が到達度試験実施の経緯を知る上で参 考になる. 1.2 数学的基礎学力の必要性 数学の基礎学力を備えていることは将来技術者になる 者にとって必要不可欠な要件である.例えば電気機械分 野においては製造,設計解析,評価,そして環境建築分 野においては設計,構造解析,予測などに数学的能力が 必須となっていると言って過言ではない.商船系分野で あっても,航海士は航路の算定原理を知る上で数学が必 要となるし,機関士は機械の動力機構を理解する上で数 学を必要とする. 1.3 到達度試験の活用と呉高専 数学の基礎教育を担う呉高専数学科では,平成22年度 から数学的基礎学力を学生に付けさせるための方策とし て,到達度試験を下記の通り活用してきた. (a) 基礎数学の学力定着 (b) 学習習慣の定着 (c) 高学年の専門科目履修に耐える基礎の定着 (d) 学生の数学的基礎学力の客観的評価 (e) 各年度の教員による教育効果の確認 文献において到達度試験を数学教育に活用すること となった経緯や呉高専における数学教育の問題点,広い 意味では多くの高専の数学教員が苦慮し悩みを抱えてい る点などを広く事例を挙げ論じ,呉高専数学科が下記の 数学教育の実践を,試行錯誤を繰り返しながら,すべて 独自に教材を作成し,行ってきたことを詳しく紹介した. (1) 長期休業課題および休業明けテスト (2) 1,2年次補習 (3) 到達度試験用プリント演習 (4) 到達度試験結果の成績への加点 2016 年8月 17 日受付 ※1呉工業高等専門学校 呉高専における到達度試験を活用した 数学教育改善の成果分析