[An autopsy case of calcified squamous cell carcinoma of the pancreas with cystic hepatic metastases].

はじめに 膵扁平上皮癌は膵癌の約4%と 言われ1)~3)まれ な疾患である. 今回我々は, 肝に嚢胞状の転移巣 をきた した膵扁平上皮癌の一剖検例を経験 した. 他臓器悪性腫瘍の嚢胞状肝転移は最近報告例を散 見する4)~8)が, 臨床上, 肝嚢胞, 肝 cystadenocar cinomaな どの嚢胞状肝病変 との鑑別において重 要であると思われる. また本症例はCT上 膵およ び肝に著 しい石灰化を認めてお り, このような石 灰化をきたした膵扁平上皮癌の報告は本症例が初 めてである. 今回我 々は, これらの特異的所見を 呈 した膵扁平上皮癌の一剖検例につき若干の文献 的考察を加えて報告する. 症 例 患者: 83歳, 女性. 主訴: 食思不振. 既往歴: 72歳, 高血圧症, 虚血性心疾患. 家族歴: 特記すべきことなし. 現病歴: 昭和60年4月 頃 より食思不振, 体重減 少が出現. 昭和61年6月 老人ホーム診療所を受診 し, 心窩部に腫瘤を触知され精査のため入院 とな つた. 入院時現症: 血圧150/70mmHg, 脈拍78/分 整, 体温36.5°C, 身長136.4cm, 体重27.3kg. 貧血あ り, 黄疸なし. 心肺は理学的に異常を認めず, 腹 部では心窩部に5横 指の表面やや不整で硬い腫瘤 を触知 した. 入院時検査成績 (Table 1) : 末梢血では軽度の 貧血を認めた. 肝機能検査ではGOT, LDHの 上 昇を認めたが胆道系酵素, 血清ア ミラーゼは正常 であつた. また尿ア ミラーゼ1週 間法は score79)と著 し く低値 であつた. 腫瘍 マーカーの うち CEA, AFP, CA19-9は 正常範囲であつたが, 保存 血清 よ り剖 検後 に測 定 した扁 平 上皮 癌 抗原 (SCC-Ag) は385ng/mlと 異常高値を示した. 上部消化管X線 検査 (Fig. 1) : 胃体部小弯後 方か らの著 しい圧排所見を認めたが, 胃粘膜面に は異常所見を認めなかつた. 胃内視鏡検査 : 上部消化管X線 検査 と同様, 胃 体部後壁からの胃外性の圧排所見を認めたが, 粘 膜面には明らかな異常所見は認められなかつた. 腹部超音波検査 : 肝左葉下面に接する様に15× 9×6cm大 の境界明瞭な腫瘤を認め膵原発腫瘍が 疑われた. また, 腫瘤内部には著 じるしい点状高 エコー像がび漫性に散在していた(Fig. 2a). さら に, 肝右葉には径約8cmの 巨大な嚢胞状病変を2 個認めた. これ らの嚢胞は単純性肝嚢胞に極めて 類似した像を示 していたが, 嚢胞壁には軽度の肥