Hydrogen Entry Behavior into Steel in Alkaline Environment
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鋼中に侵入する水素量は,水素過電圧に大きく影響さ れることが知られている1), 2).これまで,種々の環境にて, 鋼中水素量に相当する鋼中の水素透過係数の対数と水素 過電圧に直線関係が成り立つことを実験的に証明してき た3).一般的に,鋼中の水素侵入挙動は,酸性もしくは 中性環境での報告が多いが,アルカリ環境における水素 侵入挙動については報告例が少ない. 近年,アルカリ環境における水素脆化の可能性につい て議論されている.例えば,コンクリート中の鉄筋がア ルカリ骨材反応によって,破断することが報告されてお り,水素起因による割れか否かの議論がなされている. 具体的には,-0.9 V(SCE:飽和カロメロ電極)より卑な 電位で,鉄筋の破断応力が著しく減少するとの報告があ る4)-6).従って,-0.9 V(SCE)よりも貴な電位に保つこ とが,水素脆化を抑制する指標であることが導き出され ている7)-10).一方で,鉄筋が局所的に腐食する場合や, 局所的に過防食になる場合も考えられる.こうした場合 に,水素脆化が生じる可能性も否定できない.こうした 課題を解決するには,アルカリ環境での侵入水 素量を定量化する必要がある. アルカリ環境での鋼中の水素侵入挙動につい ては Lillard と Scully による報告がある11)-13). Lillardと Scullyは,陰極チャージ下における水 素侵入量を電気化学的透過法(水素透過試験法 とも呼ぶ)にて調査している.彼らは,NaOH 溶液, Ca(OH)2溶液,コンクリートを模擬したモルタルを含む 溶液での水素透過量を測定しており,NaOH溶液での鋼 中の水素透過量が最も少なく,次に Ca(OH)2 溶液での 透過量が多くなり,コンクリートを模擬した溶液が最も 透過量が多い結果となっている.特に,Ca(OH)2溶液の 水素透過量は,コンクリートを模擬した溶液よりも 30% 低下すると報告している11).また,鋼中の水素透過量に は,塩化物イオンの影響はないと報告している. 本報告では,アルカリ環境での鋼中の水素侵入挙動に ついて報告する.特に,(1)水素過電圧の観点から鋼中 に水素が侵入できる条件,(2)昇温脱離法と水素透過法 による鋼中の水素量ならびに,(3)アルカリ環境にて水 素脆化が生成する条件について報告する.