Skin cancer of Nagasaki atomic bomb survivors. III. Cases in 31 hospitals in Nagasaki city and adjacent districts.

本シリーズの第1報では, 長崎原爆被爆者における皮膚培養細胞の染色体異常の存在やクローン形成などの事実から, 被爆者皮膚癌発生率増加の可能性を示唆した。これを受けて第2報では, 予備的調査として長崎市内の3大主要病院である長崎大学付属病院·日赤長崎原爆病院·長崎市民病院で収集した110症例の被爆者皮膚癌について, 長崎大学医学部原爆資料センターに収録されている直接被爆者66,276人の資料を用いて解析した。その結果, 110症例全例および男子50症例の場合皮膚癌発生頻度と被爆距離との間に統計的に相関を認めたが, 女子60症例の場合には相関は成立しなかつた。そこで本報告では, 調査対象を31医療機関に増やして収集した140症例の皮膚癌にて解析したところ, 全症例の場合と同様に男女別症例に分けた場合にも, 皮膚癌発生頻度と被爆距離との間に推計学的相関を認めた。