[A case of thyroid crisis complicated with acute hepatic failure].

甲状線クリーゼ発症後,急激に肝不全を呈し死亡した1例を経験した.症例は52才,女性.昭和59年甲状腺機能亢進症発症.昭和61年5月感冒様症状ののち,頻脈,頻呼吸,〓吐が出現し入院した.甲状腺クリーゼの診断のもとに直ちに治療を開始したが,全身状態は改善せず,入院当夜,低血糖昏睡を生じた.ブドウ糖の静注により意識は回復したが,第2病日より再び昏睡となり,肝機能障害が増悪し,第6病日死亡した.組織学的には肝は広範な小葉中心壊死を認めるも,グリソン鞘周囲はよく保たれ,過剰な甲状腺ホルモンによって引き起こされた肝細胞のanoxiaによる壊死と考えられた.