森林における年降水量の農地・都市域との違い―日本全域を対象として―

日本の森林は農地・都市域などの他の土地利用に比べて高標高地に分布している.また,降水量は標高とともに増加するという観測事例が報告されている,これらのことから,森林の降水量は多いと予想される.ところが,森林の年降水量が農地・都市域と比べてどれだけ多いのか,日本全域を対象として定量的に検討した例は無い.そこで,本研究ではGISを用い,森林の年降水量が農地・都市域の年降水量とどのくらい異なるかを調べた.その結果,土地利用ごとの年降水量は,森林は1900.7 mm,農地は1565.7 mm,そして都市域では1575.3 mmであった.森林は農地・都市域と比べて年降水量が約330 mm多かった.この原因は,森林が農地・都市域に比べて高標高地に分布していることと,森林において降水量が標高と共に増加することの2点であることが確認された.よって,森林における流出・蒸発散の農地・都市域との違いを議論する際には,森林と農地・都市域の間に見られた降水量の違いを考慮する必要があると考えられる.