Development of Color Appearance Model

日常,我々の目に入る光はほとんど物からの反射光である. 物の分光反射率と光の分光放射の積の光情報が目に入る.しか し,物にあたる光は常に変化する.このような光環境の変化に かかわらず,我々は物の認識をしている.また,目に入る光が 同じでも,回りの環境によって色の見え方は変る.カラーアピ アランスモデルは目に入る光の情報と同時に周囲の環境の情報 を考慮して,与えられた環境で見ているものがどのように見え るかを予測するものである. 色の計測,表記,いわゆる表色系の国際規格は人間の視覚情 報処理の流れにそって発展してきた.Fig. 1 は人間の視覚系に おける色情報の生理学的な流れ,色覚モデル,表色系の関係を 示している.CIE(国際照明委員会)が測光・測色の国際規格 を行っているが,今はそれがそのまま ISO 規格になる取り決 めになっている.CIE はまず 1931 年に XYZ 表色系を制定し た.これは Fig. 1 における最初のレベルである.この X, Y, Z は三刺激値と呼ばれ,ある光刺激が目に入った時に光受容細胞 である 3 種類の錐体が吸収した光の量に直接的ではないが対応 する.錐体からの応答は非線形な変換を経て,輝度情報と,色 情報へ分離される.このレベルに対応する表色系が 1976 年に 制定された CIE Lab(CIELAB)表色系であり,尺度が感覚 量に対応するように作られたもので,均等色空間と呼ばれ,色 差の評価などに用いられている.色情報はさらに高次の視覚情 報処理過程に進み,最終的に色の見えの 3 属性である明るさ, 色相,鮮やかさの知覚,カテゴリカルな色名に辿り着く.この 段階を定量的にモデル化したものが 2002 年に発表された CIE カラーアピアランスモデル(CIECAM02)である.1990 年代 から始まった CIECAM が出来るまでの過程を振り返って見 る.CIECCAM は基本的には多くの実験データをうまく説明 できるにした実験式である.しかし,大まかには人間の色情報 処理の流れに沿っているので,本稿では色覚の流れと関連させ ながら CIECAM の構造について解説する.さらに,この CIECAM を発展させて,均等色空間の概念を導入した応用例を紹 介する. 日本画像学会誌 第 50巻 第 6号:539-542(2011) ©2011 The Imaging Society of Japan 539