肛門の直腸粘膜脱,とくにホワイトヘッド術後直腸粘膜脱は,出血,粘液漏出,排便感覚の阻害,括約筋機能低下の点で患者を悩ます疾患である.病態としては,粘膜の脱出とともに,肛門上皮の喪失あるいは脱出に機能不全が加わっており,その治療は容易なものではない。これらに対して従来,Carmelが考案したSSG(sliding skin graft)法あるいは痔核根治に用いられるLE(ligation and excision)法が用いられてきた.ところが前者は,肛門内に横に走る瘢痕が形成されるという点に,後者では肛門内への皮膚弁移動が十分に行われない点に欠点があったようである.私はこの2者の長所を採り欠点を除く手法として,LESSG(ligation and excision, sliding skin graft)法を昭和57年より59年6月までに47症例に対して行った.その結果,平均創治癒日数は27,1日で,特に術後合併症や再発例もなく,従来の術式に比べても優れているという結果を得たので報告する.