はじめに 食道に発生する嚢腫はまれであるものの,近 年食道 透視 ・内視鏡などの進歩とともにその報告例は増加し ている.し かしながら,食 道壁内に嚢腫が認められる ことはきわめてまれであり,特 に,上 皮の形態や発生 部位から食道壁内気管支嚢腫として報告されたものは これまでに13例の報告しかない1).今 回われわれは術 前に超音波内視鏡を施行し,有 用であった食道壁内気 管支嚢腫と考えられる症例を経験したので,若 干の文 献的考察を加えて報告する. 症例 患者:56歳,男 性. 主訴:上 腹 部痛. 家族 歴:特 記す べ き こ とな し. 既往 歴:昭 和45年 虫垂 切 除,昭 和45年 お よび昭和48 年痔核 切 除. 現病 歴:昭 和61年4月 上 旬 に上 腹部 痛 が 出現 したた め4月17日 に近 医 を受 診 し,上 部 消化 管 造影 お よび内 視鏡 に て食道 の粘 膜下 腫瘍 が疑わ れ,精 査 目的で5月 23日 当科 入院 とな った.な お,嚥 下 困難・ 胸 骨後 方痛 および不 快感 ・体 重減 少 はな か った. 現 症:身 長147cm,体 重47.5kg.栄 養 は 良好 で貧血 およ び黄 疸 はな く,全 身 の表在 リンパ節 の腫 脹 も認 め なか った. 入院 時検査 所見:血 液一 般,肝 機 能,腎 機 能 お よび 電解 質 な ど血 液化 学 で は異 常 な く,便 潜 血反 応 は陰性 で,心 電 図 ・肺 機能 検査 さ らに胸 部 ・腹部 単純 写真 に も異常 は なか った.ま た腫瘍 マ ーカ ーではcarcinoembryonic antigen(CEA)が3.6ng/mlで α-fetoprotein
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