Paleoclimatological study using stalagmites from Java Island, Indonesia

はじめに 鍾乳石中の酸素・炭素安定同位体比は, 古気候 /古環境を復元するための強力なツールとして, 近年盛んに研究されている(例えば, McDermott et al., 2001; Fairchild et al., 2006).鍾乳石の 安定同位体比は複雑な過程の集積シグナルである ので, 気候プロキシとしての信頼度を正確に評価 するためには, 気象観測データとの比較・検討が 必要不可欠である.そのような研究はこれまで幾 つか報告されている(例えば, Burns et al., 2002; Treble et al., 2005)が, それらの先行研 究では正確なtravel time(地表から洞内までの 水の浸透時間)の見積もりがなされておらず, 比 較が不完全であった.本研究で調査したインドネ シア・ジャワ島西部のスカブミ地域にある Ciawitali洞窟では, トリチウム-ヘリウム法によ り滴下水のtravel timeが13.3 ± 6.5年と正確に見 積もられている(Yamada et al., 2008).そこ で, 本研究では, この正確なtravel timeを考慮に 入れて, 気象観測データと石筍中の安定同位体比 時系列データの比較を行った.さらに, 石筍の安 定同位体比が洞内環境に支配されている可能性も あり, この場合, 洞内環境の変化がその場で石筍 に記録されるので, travel timeを補正せずに降水 量と安定同位体比を比較することも行った.