近赤外分光分析法の生乳成分測定への適用性を検討した. 農水省畜試で生産された個乳110点を試料として用いた. 標準分析法として, 脂肪はゲルベル, 蛋白質・カゼインはマクロ・ケルダール, 乳糖はレイン・エイノン, 全固形分 (TMS) は標準重量法を採用し, 近赤外分光装置として, Neotec Model6350を使用した. 50点の試料でキャリプレーションを行ない, 近赤外法での成分率算出のための重回帰式を求あた. 残り60点の試料を用い, 設定した重回帰式から, 成分率の推定を行ない, 公定法の分析値と比較することから, 近赤外法の性能を試験した.その結果, 近赤外法一公定法の相関係数は0.995 (脂肪), 0.907 (蛋白質), 0.901 (乳糖), 0.994 (TMS), 0.854 (カゼイン), 近赤外法一公定法の回帰式の周りの標準偏差は, 0.0901 (脂肪), 0.0981 (蛋白質), 0.0772 (乳糖), 0.0922 (TMS), 0.0908 (カゼイン), また, 近赤外法と公定法との差の絶対値の平均値は0.0710 (脂肪), 0.0742 (蛋白質), 0.0726 (乳糖), 0.0748 (TMS), 0.0951 (カゼイン) となった. 以上のことから近赤外法は, 赤外法と同程度の精度で, 脂肪・蛋白質・乳糖率の測定ができること, TMS・カゼイン率の測定では, 赤外法による推定法 (脂肪・蛋白質・乳糖率に補正値を加えTMS率を, 蛋白質率に0.8を乗じてカゼイン率を算出するもの) より, 精度において, 若干, 優れていることが明らかとなった.