We improved our digital watermarking software. The new version of watermark insertion and extraction modules function as DirectShow filters and use Graphics Processing Units (GPUs) for quickness. The modules insert and extract watermarks in real time. 1. はじめに 放送コンテンツに電子透かしを適用することで、映 像以外の補助データを用いずにコンテンツを素早く識 別することが可能となる [1]。緊急報道など生放送での 利用を前提とすると、電子透かしの埋込、検出が HD 映像に対してリアルタイムで行えること、また電子透 かしデータの検出を数秒程度の長さの映像でも行える (電子透かしデータの有無や内容の切り替わりに対し、 検出結果が数秒程度で反映される)ことが要件である。 筆者らは、主として著作権保護の用途を想定し、放 送コンテンツに適用可能な電子透かしの開発を行って き た [2][3] 。 本 電 子 透 か し は 、 汎 用 性 を 重 視 し DirectShow 対応ソフトウェアモジュールとして開発し たが、全て CPU によるソフトウェア処理であるため、 リアルタイム動作は困難だった。 そこで、Graphics Processing Unit (GPU)ボードを用い ることで高速動作し、かつ汎用性のある DirectShow 対 応モジュールとして電子透かし機能を提供するソフト ウェアを作成したので、本稿で報告する。 2. 電子透かしモジュール 電子透かしモジュールは、埋込モジュールと検出モ ジュールからなる。いずれのモジュールも、パソコン で一般的に用いられている安価な GPU ボードを用い て高速に電子透かし処理を行う DirectShow フィルタ として機能する。したがって、DirectShow フィルタに 対応した HD-SDI 入出力ボードと組み合わせれば、埋 込から検出までの電子透かしシステムを構成すること ができる(図 1)。 2.1. 埋込モジュール 埋込モジュールは、入力された非圧縮 YCbCr 形式の 動画像に電子透かしを埋め込み、非圧縮 YCbCr 形式の 動画像を出力する DirectShow フィルタである。埋め込 むべき“透かしデータ”を誤り検出・訂正符号を使用 して冗長化し、“埋込データ”を生成する。“鍵”を使 用して発生させた疑似乱数列により、埋込データの各 ビットの画面上での埋込位置を決定し、“埋込データ マップ”を生成する。ここで、埋込データマップは、 動画像の画素毎に用意された、画素値に足し合わせる べき透かし成分値である。入力画像の特徴を解析する ことで電子透かしの画質劣化に与える影響を推定し、 適切な埋込強度を設定する。最後に、埋込強度を反映 させた埋込データマップを、入力された動画像に足し 合わせる(図 2)。 透かしデータと鍵から埋込データマップを生成す るまでの処理を PC で、動画像の各フレームに対し埋 込データマップを適用する処理を GPU で、それぞれ行 う。埋込データマップは、透かしデータか鍵が変更さ れない限り変わらないため、埋込データマップを事前 に生成しておき、各フレームの入力毎に毎回行わなけ ればならない埋込強度の計算と実際の埋込処理だけを GPU 上で行うことで、高速化を図った。 2.2. 検出モジュール 検出モジュールは、非圧縮 YCbCr 形式の動画像から 透かしデータを検出する。埋込データの各ビットの埋 込位置は、埋込時に使用した鍵を用いて埋込時と同様 の手順で特定する。電子透かし信号の成分を抽出する 処理により、埋込データの検出を行う。最後に、誤り 検出及び訂正を行い、透かしデータを得る(図 3)。 11-4 2011年映像情報メディア学会年次大会(ITE Annual Convention 2011) The Institute of Image Information and Television Engineers NII-Electronic Library Service 本電子透かし方式では、高画質を実現するため、小 さな電子透かし強度でも検出できるように、複数フレ ームに電子透かしを拡散させている。よって、検出モ ジュールは、複数フレームから電子透かしの信号成分 を抽出しなければならず、かつ透かしデータの変更や 有無の変化に素早く反応するためには、各フレーム入 力毎に常に最新のフレームを加えてかつ少数のフレー ムから抽出処理を行うことが必要である。GPU の導入 で処理自体が高速化されたことと、GPU に最適化しア ルゴリズムを改良することで信号抽出精度が高まり少 数フレームからの抽出が可能となったことで、高速な 電子透かし信号抽出を達成した。 3. 処理時間 6 コア 3.33GHz の CPU、12GB のメモリ、512 コア 1544MHz の GPU を備えた 64 ビット OS のパソコン使 用し、HD 映像(1920x1080、29.97fps)に電子透かし を埋め込む時間と HD 映像から電子透かしを検出する 時間を測定した。その結果、1 フレーム当たりの時間 で、埋込モジュールは 8 ミリ秒、検出モジュールは 5 ミリ秒程度であり、リアルタイム処理に必要となる 1 フレーム当たり 33 ミリ秒を大きく下回る処理時間で あることを確認した。 4. まとめ DirectShow 対応モジュールとして開発した電子透か しソフトウェアの埋込・検出アルゴリズムを改善し、 GPU を用いて高速処理が行えるよう最適化を図った。 これにより、HD 映像に対する電子透かし埋込・検出 処理のリアルタイム化を実現した。 文 献 [1] 大亦寿之 , 他 , “電子透かしを用いた放送局内の映 像素材識別システムの開発 ,” 映像情報メディア 学会年次大会 , August, 2011. [2] 真島恵吾 , 他 , “放送コンテンツへの適用を目的と した電子透かしの要求条件 ,” 電子情報通信学会 総合大会 情報・システム講演論文集 2, p. 89, March, 2010. [3] 山田浩之 , 他 , “放送コンテンツへの適用を目的と した電子透かしソフトウェアの概要と性能 ,” 電 子情報通信学会総合大会 情報・システム講演論 文集 2, p. 90, March, 2010.