Motion Measurement of Violoncello Bowing and Analysis of Skill-Acquisition

1.は じめ に 弦楽器の演奏など,身 体 と操作対象との物 理的相 互作用 があ る動作 の遂 行 には,運 動 (位置,速 度)と 力 の同時 制御 という高度な 技巧 を必 要 とす る1)。この ような技巧動作 の 獲得過程 を調べ るこ とで,ヒ トの身体構造の 特徴である冗長 な自由度の最適化 メカニズム が明 らかになれば,技 能修得の効率化など様々 な応用が期待 できる。本研 究では,非 日常的 動作で,被 験 者の生 活履歴の影響が少ないと 考えられるチ ェロの運弓動作 を例 として動作 計測 を行い,そ の習熟過程の解析 を試みた。 2.方 法 2。1.計測 システム 計測 システ ムを図1に 示す。本研究では, チェロの音色 を決める弓圧,弓 速,サ ウンディ ングポイン トを計測 し,そ れらの情報をリア ルタイムで視覚的にフィー ドバ ックすること ができる計測用模擬 チェロ を製作 した。 これ は複雑で評価が困難 な音の要素を,単 純 な力 学量 に置き換 えるこ とによって簡 略化 し,ヒ トと楽器系の相互作用の包括的な解析を可能 にする意義 を持つ。弓圧は弦に相 当する回転 円筒の両端に取 り付 けられたひず みゲー ジ式 片持 ちは りセ ンサで求め,弓 速は円筒の回転 をポテンショメー タで計測 し,こ れを時 間微 分することに より求 めた。弦に対 する弓の接 触位置であるサウンディングポイン トは弦の 左右にかかる力の比 より算出 した。得 られた デー タは図1の ようにリアルタイムで画面 に 表示することで被験者 にフィー ドバ ックした。 弓の毛の部分はゴムとした。 上肢,体 幹,弓,チ ェロ本体の3次 元運動 の計測 に は,赤 外 線半導体 カメ ラシステ ム (浜松 ホ トニクスC3570)を 用いた。各体節 にはそれぞれ3点 の標点を装着 し,回 旋 角度 を含む各節の関節角度を計測 した。関節 角度 は3軸 系オイラー角により定義 した。