Quantitative Analysis of Hydrogen Peroxide by High Performance Liquid Chromatography

過酸化水素は,主としてヨウ素滴定法により定量されているが,これは試料溶液中の酸化力を測定しており,過酸化水素を選択的に定量しているわけではない。よって,酸素やオゾンなどの酸化剤によるパルプの漂白を研究する場合のように,反応溶液中に過酸化水素以外の酸化力を持つ物質が存在する場合,正確な過酸化水素の定量は困難となる。そこで,本報告では,高速液体クロマトグラフ(HPLC)上で過酸化水素を酸化力を持つ他の物質から分離定量するための分析条件について検討した。HPLC上で過酸化水素を分離するためのカラムは,1994年にMiyazawaらによって見出されており,本報告でもこのカラムを用いた。このカラム本体や他の接液部に使用されているステンレス鋼による過酸化水素の分解を防止するためには,溶離液中に少量のEDTA―2Naを添加することが有効であった。また,微量の過酸化水素を検出するには,白金電極を持った電気化学検出器が必要であるが,分析試料のpHが強酸性や強アルカリ性の場合,電極表面の変化によりベースラインが不安定となることがあった。しかし,これは,溶離液にpH緩衝能を持たせることで安定化することができた。この電気化学検出器は,電気分解により物質を検出するためベースラインのドリフトが生じる。よって,過酸化水素を定量するためには,濃度機知の標準試料を分析してベースラインドリフトを補正する必要があった。さらに,他の化合物とピークが重なるような場合には,検出電位を変えて過酸化水素の検出選択性を向上させるか,有機溶媒などを溶離液に添加して溶出時間を変える,または修飾電極を用いて過酸化水素の検出選択性を向上させるなどの方法が有効であった。これらの方法を用いて,オゾン漂白モデル実験により生成した過酸化水素をHPLCで定量したところ,反応終了直後の過酸化水素生成量は,ヨウ素滴定法で過酸化水素として定量されていた酸化力の約40%に過ぎなかったことが明らかとなった。