An eight-year follow-up study of walking movement in elderly

本研究では,歩行動作の加齢による退行を縦断的に検討するために,高齢者の自由歩行動作に与える8年間(膝伸展力は7年間)という時間的影響を明らかにするとともに、歩行能力低下防止の手だてを探ろうとした.養護老人ホームに居住する男女高齢者9名を被験者とし,膝伸展力,歩行速度,ステップ長,歩調,着地時間要素などを計測し,8年間における変化を検討した.また、歩行能力と日常生活との関連性を調べるために,各被験者の生活様式に関する直接聞き取り調査を行った.測定と調査した結果から,膝伸展力の最大値の変動と歩行動作の変動との関連性は見あたらなかった.縦断的および一部の横断的先行研究が指摘した歩行速度の顕著な減少は見られず,半数以上の被験者で歩行速度の増加が見られた.その増加に,ステップ長と歩調の両方の貢献が見られた.また,歩行速度の増減と関係なく,歩調の増加,膝動作域,片脚支持時間および両脚支持時間の占めた割合の低下が見られた.本研究で得られたこのような歩行能力の維持および向上は,各々の被験者が養護施設で実践した階段登行,散歩,ゲートボールが歩行能力に何らかの影響を与えたもの推察される.これらのことから,高齢者の歩行能力の低下防止に,日常的に行われる下半身の身体活動が有効であると考えられる.