Planning Academic and Research Library Buildings

一頁たりともおろそかにできないほど豊富な知識と経験とにちりばめられたこの大著を前にして, 筆者はかつてコロンビア大学でMetcalf教授の講議から受けた一種の熱気のようなものがよみがえる思いである。筆者ばこの解説めいた一文が原著の真意を誤って伝えてはいないかというおそれから免れえない。次の10項目はMetcalf教授がそのクラス (1965年夏期) の最終講議に学生に与えた注意である。それをもって本文の要約としたい。1. 諸君と建築家, 技術者, 或は委員会メンバーとの間に起きた誤解は如何にそれが小さな問題でも, そのまま置きざりにしてはならない。2. 建築プランはサイエンスではない。それは技術 (art) であり, 芸術 (flne art) である。従って或一つの問題には一つの解法方法しかないというようなものではない。諸君の置かれた特定状況にとって何が最良の解決策であるか見出せ。3. 建築プランは “今日” の問題と同じく “明日” の問題のためにあるべきである。時代の流れはかつてないほど急激である。かと言って, 単に何か変ったことをやろうという態度であってはならない。奇をてらうことなかれ。4. 図書館プランに没頭する前に, その母機関自体の目的を明らかにし, その現在と将来に就ての洞察力をもて。5. プランナーは財政的状況を十分に心得ておく必要がある。6. 母機関の目的と財政的状況が十分に理解されて初めて一般的基本問題-建築上の美観, 内容, 快的さ, コスト等の優位順が決められる。7. 総経費は, 上記の優位順や設計者が見積る総延面積 (gross space) のみならず, 諸君が決めうる実質面積 (assignable space) に由来することを忘れてはならない。8. 細部にわたるプランの一つ一つが重要である。即ち, スペースの有用性, 天井の高さ, モデュルの大きさ, 人の流れ (tra-ffic patterns), 防音設備など。9. 座席, 蔵書, スタッフに必要とされるスペースは十二分に確保すべくあらゆる努力をなすべきである。将来を見越して作られた余分のスペースが一時的に他の目的に使用された場合は, そこへの出入口を図書館自体の部分と区別し, 図書館への返還時期を予め明確にしておく必要がある。10. 十分なスペースをもって建てられた図書館でも, 椅子や照明その他の環境的状況から起りうる苦情を忘れてはならない。以上のいずれも見過すことのできない問題であり, 建築プランが如何に細心な注意と周到な準備・調査に基いてなされるかは強調してもし過ぎることはないであろう。