[Malignancy of mucoepidermoid tumors of the salivary glands (author's transl)].

東京医科歯科大学口腔病理学教室において35年間に取り扱った唾液腺原発の粘表皮腫60例について腫瘍の発育様式, 転移, 再発ならびに予後について腫瘍組織の分化度との関連のもとに検討した。腫瘍は分化型と未分化型とに分けられるが, 発育様式は分化型でも被包はみられず, 周囲組織との境界は必ずしも明らかではなかった。また, 顎骨内への浸潤性増殖を伴っていた例が10例みられた。頸部リンパ節郭清術例で転移を確認した例が4例あり, 広範な遠隔転移は剖検例6例中5例に認められた。転移巣の組織像は原発巣のそれと本質的な差がなかった。再発確認例は6例で, いずれも二次症例であった。30例の追跡調査 (6年まで) では, 生存例21例 (70%) , 腫瘍死例8例 (27%) と, 他病死例1例であった。転移と腫瘍死が確認された悪性経過例は12例あり, うち2例は分化型に属するものであった。これらの所見と既報告例の所見を対比検討し, 本腫瘍での良性型の存在について論じた。