ヒバ材を用いた室内空間での視覚・嗅覚刺激が人の心理・生理面に与える影響

ヒバ(Thujopsis dolabrata Sieb. et Zucc.)材を用いた室内空間での視覚・嗅覚刺激が人の心理・生理面に与える影響を検討した。供試空間にはヒバ材使用量の異なる4部屋を用いた。被験者は健常な大学生男女14名とし,入室による心理評価と生理反応の変化を調べた。実験後の室内空気の香気成分を分析した結果,ヒバ材使用量の増加と共にセスキテルペン類の気中濃度は高くなった。におい強度はヒバ材使用量の増加と共に有意に強くなり,においの快適度も向上した。また,ヒバ材を床と壁に用いた部屋は未使用の部屋より有意に「自然な」「伝統的な」イメージを与え,「疲労」(POMS)の変化量は有意に低かった。血圧と唾液アミラーゼ活性の結果から,内装へのヒバ材使用量の違いは自律神経系の活動に違いをもたらすことが示唆され,心理評価と生理反応は対応しなかった。